機関車模型 1

天賞堂16番・ダイキャスト製C62型蒸気機関車

長時間発煙装置  工作記





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発煙装置の概要 に戻る 

工 具 類
頻 繁 に 使 う も の
あれば便利な工作機



 ノギスはミツトヨ製、寸法取りの必須アイテ
 ム。今回の工作で一番活躍したのがルーター。
 ハサミで切れない0.3t真鍮板などもこれで切
 断。先端ビットは荒削り用、中仕上げ用、回
 転ノコ刃、円盤砥石などの大小各種。
 ビットの軸径に合う十種類のコレットチャッ
 ク使用。万力は、精度の高い工作機用のアタ
 ッチメント使用。
電気配線、真鍮板などのハンダ付けには必須。基板用の40Wを使用。
昔のブラス製機関車用に使った大型コテはお蔵入り。


1/80、13ミリゲージ作成用に数十年前に購入したTOYO MINI-LATHE ML-210のフルセット。
今回はアルミ製煙突先端、真鍮板、鉛ウェイトなどの切断に使用。
便利ではあるが、これがなくても、今回の工作には差しつかえない。

 家庭に通常ある工具類は省略した

今 回 新 た に 購 入 し た 接 着 剤 な ど
耐 熱 商 品
軟 接 着 剤

耐熱二液混合エポキシ接着剤

耐熱ガラス布テープ

とんぼ鉛筆製PITMULTI-2
発煙装置組み込みで、高温対策の接
着剤として購入。発煙実験の結果、
普通のエポシキ系接着剤で充分な
ことが判った。工業用で量が多く、
高価。 有効期限が数ヶ月。
千分の一も使わずに破棄か。
発煙増槽を機体から絶縁する為に購入。
結果として、絶縁の必要はなかった。
只、材質、粘着力ともに強く、配線
コード止めと炭水車のハンダ付け部分
の絶縁、部材の仮止めに使用した。
あれば便利なテープといえる。
使用法は、接着だけと、剥離可能の二種あり。
プレート貼りにゴム系接着剤だと肉厚になり、
周辺に着いたら始末が悪い。
これは後からでも歪みの修整が出来るので便利。
予想外の効用は、部材の仮止めに極めて有効な
優れものだった。随分と多用した。安い。
 瞬間接着剤、ゴム系接着剤などは省略した
2
改 造 の 初 め に 行 う こ と

 機関車は三つのユニットに分解される。

 
  ボイラー・キャブユニット(機関士・助手の組み込み後)
 
      ランボードユニット(鉛ウェイトのカット後)
 
             走行ユニット
 
            機体保護材
 三つのユニットは小さなネジで結合している。ネジは太さ、
 長さ、形状の違いで数種ある。ユニットや部品を外したら
 直ぐに元の位置にねじ込んでおくこと。
 外したネジを一括プールして後で使おうとしたら、組み立
 ての時に混乱することは目にみえている。
 ネジの着脱にはドライバーを使うが、百均でも売っている
 2,400ガウス位の強力な磁石でドライバーを帯磁させておく
 小さなネジの脱着が簡単・確実にできる。
 機体は極めて繊細な部品を装着している。改造工事で様々な持
 ち方、置き方をする。部品の変形・破損の恐れがある。
 特に、ドーム前の手すり、ランボードユニット後部の泥溜、ス
 テップなどが突出している。そこで部品保護材を写真のように
 両面テープ等で取り付けた。煙突とドーム間の保護材は、完成
 車体でもカンタムのコネクタやドローバーの脱着などで裏返す
 ことがあるから、木製ツールの裏にラシャ布を貼って機体を傷
 つけないように常備品とした(右下写真中央)。

3
煙 突 の 改 造




 煙突の改造は極力オリジナルの部品を使いたかった。今回のC-62モデルの煙突の火の粉止めは、再現性が良いとの評判だった。
 ただ、この火の粉止め部品は、土台が樹脂製、上は金属製の網目盤で構成されていた。
 樹脂製土台は発煙装置の100度を越す噴煙には耐えられないと予想した。そこで、アルミ製の部品を自作した。
 真鍮よりアルミの方が放熱効果が高いと判断した為である。工作機を使って簡単にできた。

 樹脂部品とともに外した火の粉止め網円盤を、このアルミ
 部品の上に耐熱接着剤で接着し、この火の粉止めのセット
 をダイキャストの煙突に上からかぶせて接着した。
 予め作っておいた独立増槽2のタイプ(前ページ掲載済み)
 を仮に組み込んで、テストをした。

 ダイキャストは塗装のないところや塗装の剥げたところは通電する。
 その為に、増槽が機体に接触する部分には耐熱テープを張り、ゾイデの外周と煙突内部は黒塗装で絶縁対策をしていた。
 発煙噴出口の直上にある火の粉止め網円盤が噴煙にどのような影響を与えるかが実験の目的だった。
 発煙の状況結果は、噴煙が編み目によって分散され、装置単体の時の勢いが全く出なかった。
 発煙して三分位経った頃、この編み目板がびっしりと濡れてきた。水(油)滴がまとわり着いたものと思われる。
 発煙が終わって仮組みを外そうとしてボイラーユニットを裏返したら、ボイラー内の天井がかなり広範に水(油)滴で濡れていた。
 火の粉止めの金属網に着いた水(油)滴が、機体と発煙筒の隙間からしたたり落ちたものである。
 ただ、この液体はサラサラで、ティッシュで簡単に拭き取ることができた。
 発煙装置の噴射口の直上は完全に開放しなければならないことが確認された。
 それとゾイデと機体との絶縁目的である黒塗装が一部剥げていた。おそらく熱の為と思われる。そこを液体が通過したと言うことは・・・煙突内の一部塗装とゾイデ外周の塗装を全て剥いで、煙突内壁にゾイデの外周が接触する状態でテストした。発煙に全く異常がなかった。発煙装置・増槽と機体の絶縁は必要がない事が確認された。これが機体一体型の増槽を作る発想につながった。

 話しを煙突の穴開けに戻す。
 実験の結果、発煙装置の中央噴出口の直上を完全にオープンにすれば、火の粉止め外周の温度は殆ど上がらず、オリジナルの樹脂製土台でも充分な事が判った。わざわざ金属製に替える必要がなかった。
 火の粉止めの網目円盤の中心にある十字の部分はニッパで簡単に切り離せる。円形開口部は直径約3oとなる。
 問題は樹脂部の開口である。網目円盤と同様に、樹脂の土台部品にも円盤に対応する穴が空いている。
 日曜大工用の電動ドリルでの穴開けは厳禁
 軟質樹脂製なので、電動ドリルで3oの穴を一気に開けようとすると、ドリル刃と樹脂の回転接触熱で樹脂が刃にねばりついて多分樹脂部品を破壊してしまうだろう(筆者は最初から樹脂部品を外してしまったので断言できないが・・・)。
 ここは、トルクの弱いルーターに先端ビットを使って慎重に穴開けするのが無難といえる。
 

 各種先端ビット類 ほんの一部の例

 左上は中削り、中仕上げ用
 左中央は微細削り、仕上げ削り用
 左下は荒削り用
 写真右: 先端ビットの軸径は各種あるので、それに対応する各種のコレット
 チャック。
 この他に、2o以下の微細な穴開け用の各種ドリル刃、丸鋸刃、円盤砥石、
 磨き用砥石などの多彩な先端工具がある。

 樹脂の穴開けには、幸い中心に穴が空いているので、丸ビットや円錐ビット
 で掘り進んだら良いと思う。精度は必要ない。 
4

機 体 一 体 型 発 煙 装 置 の 製 作


 各種増槽を試作実験した中、発煙装置の保守で簡便な 独立増槽タイプ-2 の造り方を参考までに・・・。

  
 底面寸法は上図の通り。側面の高さは11〜
 12oが適当。0.1t真鍮板はハサミで切れる
 が、0.3t底面板はルーターの丸鋸で切れば
 良い。底面を0.1tにしても大丈夫かも知れ
 ない。そうすれば工作が楽である。 


機 体 一 体 型 増 槽 の 工 作

増槽の容積の限界と配置イメージ

 
             ランボードユニット
  
増槽はボイラーユニットに設けるが、ランボードユニットの配置部品が
増槽の配置と容積を規制する。
ランボード前面の、ヘッドライトに電源を供給する基板が大きなスペース
を占め、特に前後のコネクター三個がボイラーユニットの下部に飛び出し
ている。前方のコネクター受けは、煙室扉についているヘッドライトのコ
ネクターを差し込む受け口。高さは右のコネクター二個と同じになる。
基板のやや前方にある穴は、上部煙突の内径穴を垂直に降ろした関係に
ある。
これを囲む馬蹄型の二本のネジで止まっている部品は今回のC62蒸気機
関車には関係ない。従って、この基板とコネクターは、16番ダイキャスト
シリーズの共通部品と思われる。
 左のスペース環境から、組み込む増槽のイメージを上
 の図に示した。前部コネクターが、側面支柱の前縁か
 ら約1.2o後方に食い込んでくるので、これとゾイデ
 の発煙装置との隙間は約1.5o位しかない。
 この隙間に増槽前部隔壁を設置しなければならない。
 ゾイデとこの隔壁が密着してもかまわないが、中央
 発煙筒は発煙装置の外径の中心に位置するとは限らな
 い。噴射口を煙突の中央にもってくるには、装置の外
 径を前後左右に少し傾けることが必要になってくる。
 その為には隔壁と発煙装置の外径との間に僅かでも隙
 間が欲しいところだ。

増槽の前・後隔壁について



 ボイラー内部天井曲線の出し方
 適当な大きさの白紙を硬い板や机の上に敷き、ボイラー部先端を下にしてボイラー・キャブユニットを紙に立てる。
 そのボイラーの外径を鉛筆で紙になぞって書く。全周の必要はなく、先端全周の後ろにある切り欠いたボイラー下端まで写し
採れれば充分である。写し取ったボイラー曲線の内側に、ボイラーの肉厚相当の内径曲線を手書きする。厳密な必要はない。
 その線をなぞってハサミで切り出す。
 前部隔壁
 前部隔壁はボイラー前部側壁にある支柱間に設置するので、厚み(t)0.1oの真鍮板を支柱間の距離巾で細長くハサミで切る。
 巾はなるべく厳密に切ったほうがよいが、高さは所用の寸法(上図左)より少し長めに切る。
 真鍮板を寝かせ、ハサミで切り取った内径曲線の紙を真鍮板に重ねる。ボイラー天井の頂点を長方形真鍮板の先端に合わせ、紙型
の左右円形の中心に真鍮板の中心がくるように調整する。紙型上部の円形から、直線巾の真鍮部分が顔を出す。油性極細ペンで頂部
の曲線を真鍮板に書き写す。これをハサミで切り落とせばよい。
 後部隔壁
 
上面曲線の出し方は前部隔壁と同じ。
 ボイラー外径は円形だが、内径はボイラーの半分以下ぐらいから直線となっている。その巾は、ボイラーユニットの下端間の距離
を測れば簡単に判る。高さは発煙装置をセットし、装置外径の下部に開けた流通口の天井からの距離が決まらないと出せない。
 ただ、後部隔壁の直後にコネクターがあるので、折り代を付けてペラペラの板のうねりを防ぎ、併せて底版との結合を容易にする
意味がある。

 工作手順

 
まずは前部隔壁の取付けである。
 これまでの独立増槽の発煙時間から、せめて一時間くらいの連続発煙を実現したいと願っていた。前部コネクターの増槽への圧迫は手痛かった。一滴でも多くの発煙剤を入れたくて考えた構造が図4の前部隔壁である。隔壁は支柱前縁の面位置まで前に出し、コネクターが干渉する部分だけ隔壁を凹ました。平板の隔壁をコネクターの直後に設けるよりか、これでかなりの発煙剤の量が稼げたと満足した。まさか、三時間超の連続発煙が可能になるとは思ってもみなかった。

左が筆者の組み込んだ前部隔壁。図4でも判るように、凹みの工作は結構手間が掛かる。それと、写真で判るように、二つの支柱間には複雑な凹凸ができた。この複雑な処に増槽底板の前縁をはめ込む訳だが、何度も嵌め合いと修正を繰り返した。
発煙剤を少しでも多くとの思いで頑張ったが、結果論としては、無駄な労力だった。
今から挑戦される方が居られたら、凹みの無い平板を、右写真のようにコネクターの裏側につけられたら簡単に済む。
この隔壁の前にあるのは、鉛ウェイトの第一次切削分を移設したもの。
この鉛の背面に沿って隔壁をつけたので、垂直ガイド(治具)は必要なかった。

 治具(ガイド)の製作

 支柱間に隔壁をつけるには目分量という訳にはいかない。
 適当な厚みの木を支柱間に渡る巾で切り、長さは支柱が内壁カーブと融合する手前
 位でよい。
 コネクターは支柱前縁より約 1.2o入り込むので、1.3o厚位の材料を写真のように
 木に貼り付ける(白い部分)。
 ミリ単位の厚みの木材はないので、各種厚みのあるプラ板を筆者は多用している。
 この治具を支柱前縁に固定するのに普通は粘着タープを使うが、これは極めて不安
 定。
 こうした治具・ガイドの固定には強力な両面テープを使ったりするが、これとは別
 の作業でトンボ鉛筆の水性のりを使ってみた。強く接着するのと、接着しても剥が
 せるのと二種の使い分けが出来て、実に便利な優れものだった。
 治具が出来れば、これをガイドに正確な部材の配置が簡単にできる。治具を固定して、隔壁が所定の位置に配置されたら、少し長めに作っていた隔壁の下面(実際はボイラーをひっくり返して作業する訳だから、作業では上面 = 以下、同様に解釈して下さい)に
支柱下面の位置を油性ペンでマークし、一旦隔壁を外して、支柱下面から飛び出た部分を切断する。再びセットすれば、隔壁下面と支柱下面の高さが同じになる。
 隔壁の間に瞬間接着剤を左右上下それぞれ二ケ所くらい点付けする。これで隔壁は不用意に動かなくなる。二液混合のエポキシ樹脂
接着剤で隔壁と支柱の接合部を完全に目止め接着する。

 有効な治具ができれば、作業の八割方は終ったと同じとよく言われるが将にその通りだと思う。
 今回の作業で、カマボコ板、アイスキャンデーの木のスティック、爪楊枝などを治具作りや計測の補助によく使った。

 発煙装置と底版の位置決め

 これが機体一体型増槽製作のハイライトとなる。



 発煙装置の固定を、前部隔壁接着の次に行う
 発煙装置の縦方向の位置は、ボイラー・キャブユニット(ボイラーユニットと略す。ユニット先端は円形になっているので、正確にはここが下端ではないものの、ランボードユニットと接合する位置であることから解り易く下端とした)下端を水平に見て図5のよう
に発煙装置の底面のコードがついているマゼンタ色の三角錐が少し頭をのぞかす程度を目安に機体の煙突内壁に挿入する。只、この下
にランボードユニットの先端基盤が配置されるので、これより下げないこと(天地逆さまの作業では装置を上げないこと)。
 きつきつに入った場合は、これが仮止めになり、ボイラー天井との接点をパテで埋める。煙突内壁を削り過ぎて、装置が上下ユルユルの時は、装置とボイラー天井との接合部にパテを塗り、パテの乾燥前に、煙突を上部から見て、中央発煙筒が煙突開口部のほぼ中央になるように筒の取付け角度を調整してパテの乾燥を待つ。パテは模型用でよい。パテを使うのは、発煙装置の交換など、取り外しを容易にする為である。それと、煙突上部から水(油)滴が増槽に入るのを防ぐ目的もある。

 増槽底板の位置決定と補助材

 発煙装置の固定が終わってから、底版前縁の高さを決める。
 底板は、発煙装置の外周に開けた穴の底部と同等か、それより少し上
 になるようにする。底部の発煙材を残留させないで全て使い切る為に
 必要。
 底板に傾斜をつけるのも同じ意味である。
 底板前縁の適正な高さを決める底板前縁受けが必要。
 これは、前部隔壁と発煙装置間には余裕がないので、ボイラー内壁の
 両側面にある支柱の後側面に吊り付ける。
 これらの距離出しの基準を支柱下端面(実作業ではボイラーユニット
 を逆さにするので支柱上面)におく。

 判り安いように、発煙装置の外周に開けた開口穴はこちら向きにした
 が、後部隔壁に向くのが理想。ただ、前部隔壁側は空間にゆとりがな
 いので、そちら向き以外ならどこを向いていてもかまわない。

 発煙剤の注入がゾイデの外周下部開口部を超えると、増槽の中に閉じ
 込められた空気の逃げ場がなくなって、発煙剤が入らなくなる。
 必ず後部隔壁の上部に空気穴を開けておくこと。 

 
 底板のボイラー内壁天井からの距離は、天井からノギスを使って測るより、図7で示した方法が簡単で確実だ。当て木を支柱底辺にあてがい、発煙装置開口部の下端までの距離を出す。その距離に応じた追加当て木を最初の当て木に貼り付ける。
 微妙な数値なので、薄い木やプラ板を併用して近似の厚みにする。
 できた当て木をガイドにして、予め、適当の巾に切って直角に折っておいた L 型の真鍮受け金具を両支柱の後ろ面に貼り付ける。
 この時の仮付にもトンボの水性のりを利用し、その後、瞬間接着材で固定した。
 使った図7の右の複合当て木を利用して、ボイラー内壁天井から底板前縁までの距離を測った。
 後部隔壁の高さは、天井から底板前縁までの距離から約1.5〜3ミリ短くすれば底板に傾斜がつく。こうして数値を決定した。
 
 これで後部隔壁が機体に接着出来る。
 隔壁は、ボイラーユニット両側面支柱後端より10o後方が限界。そこで木ぎれを使って、支柱後端より10oの位置に治具を置いた。

 治具といっても単なるあり合わせの木を切っただけである。
 両支柱後端を結ぶ線との平行と、隔壁の垂直が出ればよいだ
 けの物。
 この治具に沿って後部隔壁をボイラー内側にセットして、
 機体が隔壁に接する両側面の上下二ケ所に、瞬間接着剤の点
 づけをして固定した。
 これで増槽作業の大半は終ったようなものである。
 そして、二液混合接着剤を接合面に塗りたくった。
 実用乾燥に24時間かかるので、この時間を利用して底板の
 作成に取り組んだ。

 底板製作

 左の列は既に組み込んだ底板。
 既に述べたように、発煙剤を一滴でも多く
 入れようとして前部隔壁を複雑にした為、
 底板前縁の形状が大変複雑になった。
 長い発煙時間の結果、ここまで「セコイ」
 ことをする必要はなかった。
 右の列は、単なる平板の前部隔壁を採用し
 た場合の底板。単純で簡単に作れる。

 t 0.3 o板を基本とし、t 0.1o板をその上
 に重ねるのは、発煙装置交換などの時、t 
 0.1o板はルーターの先端ビットで剥ぎ易い
 からである。このゾイデを通す穴はΦ5oよ
 り少し大きく開ける。発煙装置の傾きが予想
 されるからである。
 t 0.3 o板の穴はさらに大きく開けて円の
 前を切り開いた。底板調整の時、ゾイデの
 コードを穴を通して脱着するのは大変不便
 であり、装置交換の時も便利だと思う。
 機体と隔壁、隔壁と底部を接合するのに
 少々の間隙があっても何の問題もない。
 エポキシ接着剤は隙間を簡単に埋めてくれ
 る。

 後はこの底板を前後の隔壁と目止め接着して完成ということになる。


 発煙剤の漏れのテスト(必須)

 水を増槽に入れてのテストも出来るが、あとで水を抜く
 のが大変である。

 発煙剤を1mlも入れれば充分だろう。
 発煙剤を入れて直ぐに漏れるようであれば目止め接着の
 基本的ミスということになる。
 完全チェックのし直しとなれば、最初に接着するより難し
 い。従って、目止めには、接着剤を惜しまずに使った。

 困るのは、時間をかけて滲み出す現象である。
 テストでは、ボイラーユニットの下に敷いた新聞などの
 上に、ティッシュペーパーを重ねて敷き、一時間くらい
 放置して様子を見る。
 それで、ティッシュペーパーに濡れた様子が無ければ
 無事に完成したということになる。

5

切 除 し た 鉛 ウ ェ イ ト の 処 置


 ボイラーユニットの先端は、側面支柱の前縁から6o空いている。
 只、ランボードユニットからヘッドライト用コネクターが立ち上がり、それに煙室扉についているヘッドライトコネクターをつな
ぐようになっていて単純に空間が使えるものではなかった。更に煙室扉を差し込まなければならない。
 そこで煙室扉の嵌め合いを確認した。
 煙室扉の裏(左)は、ヘッドライトの根元と、ボイラー
 ユニットに差し込む円形の突起物が際立った。
 この円形突起物の内径を測り。切断する鉛ウェイトの
 断面と照合したら、ライトの根元と、たくされた配線、
 ランボードから立ち上がるコネクターを逃げる切削が
 必要だが、第一カット分がそっくり再配置出来ること
 が判った。支柱前縁に着ける時、煙室扉裏側の円形突
 起物を避ける為、ボイラー内壁からの空間が必要(下
 の写真右)

 右写真の煙突火の粉止めは、アルミ棒から削り出した
 もの。結果的には、製品の火の粉止めをそのまま使え
 ばよかった。


  第二カット分の処理 (選択)
 
 第一カット分の再配置状況から、その下の左右に更に配置出来るので、第二カット分を更に分割した。



 第一カット分の下に接着した左右の第二カット部の下端は若干削る必要がある。
 ランボード下の両空気溜の裏には二ケ所のバリがあるので、鉛丸棒を三分割して納めた。因みに、余った鉛は2グラム、空気溜に配分した鉛棒は両方で3グラムだった。切削で粉塵となった鉛は2〜3グラムとみても、機体重量はほとんど変わらなかったといえる。
 これらの切断には工作機を、切削にはルータービットを使った。
 鉛は柔らかいので、鉄切りノコで切断できる。削りはヤスリよりルータービットの方が効率的である。

 ただ、連続三時間発煙の必要がなければ、増槽の後部隔壁を4o前にして増槽を作れば、第二カットは必要なくなる
 それでも、二時間くらいの連続発煙は可能だと思う。

6

発 煙 装 置 の 電 源 供 給 処 理


 前ページの概要でも述べたように、常に発煙させるとは限
 らない。しかも、発煙装置の空焚きは厳禁である。
 その為に、供給電源の入り切りスイッチが必要になる。
 それと、カンタムシステムの配線と独立した電源供給が好
 ましい。
 何しろ、中身がびっしりと詰まった機体だから、これらを
 実現するには炭水車(テンダー)を利用するしかない。
 
 炭水車の台車から集電しているので、この配線がカンタム
 システムの基板に接続される前に電気を分岐する(左上)。

 炭水車の天板に極小スライドスイッチを設けた。
 下に厚み1oのプラ板を敷き、スライドの両端に5o各の
 プラ棒を接着。この間にスイッチをゴム系接着剤で接着
 した。
 更に、左写真の下でOFFと書いている前に、1cm角位の薄い
 木を張り、その上に同じサイズのt0.3oの真鍮板を接着し
 た。この真鍮板の上に鉛溜りを造る。
 この意味は配線方法に関係する(後述)。
 天板のスライドスィッチは高さが5oあるので、石炭を高く積む前の位置にした。これよりまだ小さいスイッチがあるが、殆どがプッシュ式になって、ON/OFFの確認があやふやになる。ON/OFFの確認が確かなスライド式を採用した。
 尚、上の写真で、赤と黒の電源分岐線が写っているが、発煙装置は電流を食いそうなので、2Aに耐えられる太い線にした。
 ところが、ゾイデの発煙装置は僅か0.2Aしか消費しないのと、狭い空間では細い線ほど取り回しが楽なので、途中から細い線
(青色)に変更した。 

 この分岐した電源線を天板に開けた穴から天板の上に取り出す。
 穴は大きい穴(Φ3o)を開けて二本の線を一緒に通すか、Φ1.5〜2
 oの穴に一本ずつ通すかは自由に決める。

 この線は、後の保守を考えて少し長くしておいた方がよい。
 炭水車内部の前部に少し空間があるので、天板をセットする時、
 この空間に長めの線をたくし込んでおいた。

 写真で黒く写っている線は、機体の発煙装置につながる線。
 


 発煙装置の電源配線


 ボイラー室内の配線は、必ず側面にする必要がある。ゾイデの元々ついている線を延長する為、別の線をハンダ付けして収縮チューブでその部分を絶縁する。そうすると、どうしてもその部分の径が太くなる。
 これを天井に配線すると、鉛ウェイトが線の太い部分に干渉して、下のランボードとの嵌め合いに不都合が出た。
 側面配線だとこれが回避できる。
 この電源供給線をキャブの前面の壁まで引張り、そこで一旦テープ止めして下のランボードの火室の空間に降ろす。
 降ろしたこの二つの線を、ランボードユニット後部のカンタム7ピンコネクターがある左右の傍の穴から炭水車側に引き出す。


 
 炭水車からの線は、カンタムの7ピンコードが出ている穴から出す(写真右)。
 ここで、発煙装置の線を機・炭間でどのように繋げるかということになる。
 最初は極小のコネクターで接続・分離するように工作した。コネクターに線を組み込むには専用工具(約5,000円)が必要となる。
 このコネクターは機・炭間に露出させたままでもよいし、見かけが悪ければ、炭水車の前部空間に収容することも可能である。
 ところが、コネクター接続には不都合な点が生じてしまった。
 先ず第一に、コネクターどうしの接続は何とかなるものの、コネクターの取り外しは
 至難の業だった。下手をすると線だけを引き抜いてしまうことになる。
 取り外しの専用具がないようで、極小のマイナスドライバーでオス側(右)の僅かな突
 起を頼りにシコシコと外す他はない。これは大変な作業で苦痛としか言いようがない。
 他の一つは、線をコネクターに着けてしまうと、保守でボイラーとランボードユニットを分離する時、線をランボードユニットの
後ろの穴から抜き取る必要がある。ところが、その線にコネクターがついていると抜き取ることができない。
 都度、コネクターから線を切断しなければならず、大変不都合なことになった。
 それと、機・炭間を結ぶカンタムの7ピンコードの脱着も簡単ではない。コネクターを壊しそうで随分神経を使うことになる。
 その為、機・炭間を繋ぎっ放しにしている人は多いようだ。機・炭間を分離するのは、恐らく保守の時だけで滅多にあるものではない。走行は勿論のこと、鑑賞展示しておくにも機・炭間は接続されているのが常だから当然かもしれない。
 そこで、コネクター接続を止めて、機体からの発煙装置の線を直接炭水車に繋ぐこととした。
 この線の一本(極性が無いのでどちらの線でもよい)はスイッチに接続する。スイッチには「ピン=足」がついているので、集電線と機体からくる発煙装置の線を各々のピンにハンダ付けした。
 他の一本は、分岐線に接続することになるが、中空で不安定な線どうしをハンダ付けするのは難しい。そこでハンダ溜り(イモハンダのようなもの)を前記したように設けた。集電線は保守以外は外さない。外すとすれば発煙装置からの線だけになる。
 このハンダ溜(たま)りは固定されて動かないので、ハンダによる線の脱着作業は実に簡単だった。
 神経を使って時間がかかるコネクターの脱着と比較すると、ハンダを溶融しての線の脱着は極めて効率の良い方法だった。

 炭水車天板のスィッチは石炭で覆うことになる。
 その為に、簡単に脱着できる石炭の土台を木で作った。


 
 木の土台には、天板のスィッチを避ける穴が必要。土台が出来たら、木工用ボンドを水で薄め、木の土台全体にハケで塗る。
 そして、1/80、1/87兼用の細かい石炭粉を土台に振りかける。再たボンドを塗り、これを二〜三回繰り返して下地が見えなくな
 ったらできあがり。
 この石炭ブロックは簡単に脱着できて、スイッチのON/OFF切り替えが楽に行える。

7

その他の工作と注意点走行の課題

 キャブ内
の椅子の処理と機関士人形の組み込み

 工作の調整でボイラーユニットとランボードユニットの脱着を何度も繰り返した。
 その時、二つのユニットがうまく嵌(は)まらずに都度イライラしてしまった。
 調べてみると、ランボードユニットの機関士・助手用の椅子の内側と、キャブ内にあるボイラー後端の計器と焚き口の左右下端が
干渉してかみ合いを妨げていた。そこで椅子の内側を少し削ってみたが、それでもスムースには嵌まらなかった。
 どちらにしても、機関士・助手を搭(の)せるので、この際、ランボードユニットの椅子を外し、その椅子に人形を接着した後、キ
ャブ内に貼り付けることにした。
 ところが・・・ダイキャスト製でキャブ内側壁が厚く、ボイラー後端の側面の間に1/80の機関士が入るゆとりが全く無かった。
 そこで、外から見えない人形の側面を大胆に削り落とし、キャブ側壁の突起物も綺麗に削り取って漸く隙間に収まった。

 ランボードユニットについていた椅子のキャブ後端からの距離は、
 キャブの扉の巾と同じ。
 その距離の木切れを作って椅子背面の前後位置を決めた。
 椅子底面の高さ(逆さで作業するので)は、キャブのネジ穴二つが
 付いた逆コの字に見える焚き口の底面(作業上では上面)に椅子の
 底面まで届く当て木を当てて簡単に位置決めをした。

 ランボードにあった椅子をキャブに動かした結果、ボイラーと
 ランボードユニットの接合がスムースになった。

 ただ、機関士と助手の位置が高すぎるという間違いを犯した。
 実写で確認すると、機関士・助手の顔は、窓の上下のほぼ中央に
位置している。カトーの1/80機関士人形をキャブの椅子にそのまま座らせた結果、機関士・助手が約3o高くなってしまった。
 座位姿勢の機関士を椅子にセットした時、機関士の足が椅子の底面(即ちキャブの床)から浮いていて疑問を感じながらも、機体と
人形メーカーが違うのでそのまま見過ごした結果がこうだった。疑問は必ず正さなければならないという教訓だった。
 椅子と人形のどちらが正確なのか判らない。椅子の高さを低く削るか、人形のお尻の部分を削るかの修正が必要となった。
 今後、保守などでボイラー・キャブユニットを外した時に修正することにした。 

 機関車に人形を組み込むことに「オモチャっぽい」と抵抗のある方も居られると思うが、「音や煙を出す機関車が無人で走る」こ
との方が余程不自然で奇異ではなかろうか。

 ユニット脱着の追加の注意点

 ボイラーとランボードの脱着に関して、左の二点も注意が必要です。
 ランボードに出ている左の管は、ボイラーユニットの内側に巻き込こまれ、
 二つのユニットの接合を度々妨げた。接合の時は少し外側に向けてやる。

 ランボードの穴に差し込むようになっている右写真の縦の管は、管そのも
 のが左に曲がっていて、力をかけてこの管の歪みを修整しょうとしても、
 反力が大きくて穴の向かって左に寄ってしまう。その為に二つのユニット
 が浮いてしまい、爪楊枝などで管を穴に導くのが毎回大変だった。

 その他の工作

 1.フロントの連結器(カプラー)は不格好さが目立つ。客車をここにつないで後ろ向きに機関車を走らせることは先ずない。
   実機に近いダミーのカプラー(IMON自動連結器)に交換した。

 2.
   炭水車・前台車の横梁(はり)が、機・炭間ドローバーの着脱の関係で省略
 されている。これは、見栄えが悪く、随分気になるところだった。
 滅多にない機・炭間のドローバー開放は機体側で行うこととし、ドロー
 バーを常に炭水車につけることで台車の横粱(珊瑚模型T台車端バリA)
 追加した。
 接着には、万一の外しを考えてトンボの水性のりを使った。
  
 このドローバーは、展示用と走行用の二種類の穴を持っていて、走行用
 は機・炭間が離れ過ぎて実機の感覚と違い過ぎる。
 掲載写真は展示用の狭い間隔で機・炭間を繋いだ。

 問題は、大型蒸気機関車(全長21メートル超)の16番模型で、鑑賞と走行の
 双方を満足させる曲線レールはどうしたらよいかということになる(後述)。 

 3.盛大な空気作用管はエコーモデルのものに交換を考えたが、複雑に付けられた配管類で工作は不可能だった。
   エナメルの黒で墨入れして目立たなくした。
   空気作用管は公式側で非常に目立つ部品である。他が緻密に作られているだけに現状の空気作用管はいただけない。
   天賞堂さんには、改良モデルとして一考願いたい。

 4.ウェザリングはブレーキシューなどの一部に止めた。

 最初は発煙装置と、機体に及ぼす影響が判らず、かなりの試行錯誤を繰り返し、小難しい工作もした。
 結果的にみると、徒労に終わったものが多く、意外に簡単な工作で長時間発煙が実現できることが確認できた。
 少年の頃から思っていた、蒸気機関車模型の長時間発煙がようやく叶ったという思いに少しく満足している。


 走行の課題

   因みに、国鉄・JR在来線の最小曲線半径と、それを16番(orHO 以下16番と略記)に変換した最小曲線半径を出してみた。
   
最小曲線半径(普通鉄道構造規則第10条) 16番・最小曲線半径(R)
 設計最高速度(km/h)  V>110  110≧V>90  90≧V>70 70≧V  110≧V>90  90≧V>70  70≧V
 本線路(メートル/半径) 600m 400m 250m 160 5m 3.125m 2m
 分岐器付帯曲線 160m
100m
2m 1.25m
 ホームに沿う曲線 400m
5m
          往事の特急「燕」を牽引したC62型蒸気機関車の表定速度は 68km/h、最高速度は 95km/h だった

   日本の狭軌鉄道車両は、分岐器付帯曲線の最少半径R100mを通過できるように造られている。然し、これは低速で通過する
   引き込み線などの分岐線に使われていて、営業本線の最少半径は、70km/h以下の速度制限つきでR160m以上となっている。
   大型蒸気機関車が乗り入れる東海道、山陽本線などの幹線では、R250〜400mが主な曲線半径であったと思われる。
   16番ゲージに置き換えると、分岐ポイントの曲線半径はR1250(o)、営業本線の最少曲線半径はR2000(o)以上となる。
   これを満足する16番用の既成のレールは見当たらない。
   カトーの最大曲率R867(o)の曲線ではシリンダー尻棒と先台車の前輪が時々接触する。エンドウの最大曲率R1085(o)の
   線路では何とか走行できそうだが、機関車や客車が「くの字」になり過ぎて走行が極めて不自然でオモチャ的になる。
   レイアウト・レンタル店でも、R1250以上を超える緩やかな曲線を敷いているところは見当たらない。
   

 東京・池袋にあるNPO法人「日本鉄道模型の会」の16番ゲージ定期
 運転会では六本のエンドレスレールが敷設されている。
 曲線レール部は内周がR1100(o)〜外周はR1800(o)、直線部分は
 フル編成の列車が直線上に並ぶという大きなスケールである。
 外周路線は営業本線の最少曲線半径R2000(o)に少し及ばないもの
 の、
R1800(o)あれば、かなり実感に近い走行が味わえる筈である。

 後は、シノハラのフレキシブルレールで大曲率の緩やかな曲線を作
 るしか選択肢がないのは苦しいところだ。
 日本の一般的住宅事情ではそれすらもままならない。
   その為に、お座敷運転を中心にNゲージが主流となってしまい、16番は鑑賞用途に追いやられてしまった感がある。
   筆者は、模型の精密さ、鑑賞の質感では16番が限界だと思っている。Nゲージも随分進歩しているが、先の二つの観
   点から食指が動かない。
   16番にも、機体鑑賞と走行を融合する新たな楽しみを求めたいものである。
   その為には、愛好者同士が地域ごとに結集して、共有の運転環境を創ることしか解決の路はないのだろう。



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