強力な発煙装置に魅力を感じて入手したものの失敗だった。 何故ヤフオクでしか売られていないのか、些か疑問はあった。 それに、ヤフオクでの説明では、HO・C57以上のボイラーに付け れるとしか説明がなかった。 そこで紹介されている、C62にこの発煙装置を搭載した動画の主も、 そのモデルが真鍮(ブラス)製との説明は一切なかった。 世の中には、ブラス製以外に、プラスチック製や、天賞堂からダイキ ャスト製モデルも発売されている。 「強力な発煙装置」の販売者や、動画をUPした模型人はこうした事情 を知らなかったとでも言うのであろうか。 悪質とは言いたくないが、不親切であることは間違いない。 ダイキャスト製C62の機関車本体(以下、機体と略す)は、上(ボイ ラー・キャブユニット)、中(ランボードユニット)、下(走行ユニット) に三分割されている。 ボイラー前部には、ランボードユニットと結合するネジ穴を持つ支柱の 構造物がある。強度と重量の役割も負っているようだ。 ランボードユニットの前部には、ヘッドライト用の基板とコネクターが かなりのスペースを取っている。 「強力な発煙装置」の組み込みは物理的に絶対的に不可能だった。 それにしても、このC62は寸分の余地がないほど中身がびっしり詰 まっている。 |
この装置のミソは、毛細管現象を利用した点にある。 左図でも解るように、中央発煙筒は発煙剤に浸かっている部分と空中に出ている部分 に分かれる。発煙剤に浸されている部分は高温にならず、空中に晒されている部分の みが熱く高温になる。そして、空中に晒されている中央発煙筒の一定の高さが発煙と 発煙量の決め手となる。 毛細管現象で上昇した微量な発煙剤は、少ない電流で直ぐに加熱されて発煙するとい う特徴がある。 この原理から、発煙時間を長くしたくて発煙剤を中央発煙筒の頂上近くまで注入する と発煙筒の温度が上がらず、全く発煙しない。 発煙剤の量を減らしていく(即ち、中央発煙筒の先端からの空中露出距離が多くなる) と、電源投入から数十秒かかって漸く発煙を始める。それでも発煙量は少ない。 どれ位が理想かと言うと、発煙剤の注入量は下から2/3〜1/2位のようだ。 これだと、電源投入して1〜2秒後に発煙を始める。 外側を覆う外径筒の役割は、発煙剤の貯蔵を兼ねて、中央発煙筒、下部電源供給構造 物の保持、それと機関車に取り付ける際の物理的インターフェイスに過ぎないこと が解った。 このことから、この発煙装置の外側に発煙剤の増加タンクを設けても、有効な最大水 (油)位さえ守れば発煙原理に影響しないという結論が導かれた。 旧帝国海軍の零式艦上戦闘機が採用した「落下増槽」の「増槽」という言葉が直ぐに 浮かんだ。筆者は増加タンクを「増槽」という呼び名にした。 |
この発煙装置の真鍮管は肉厚が薄く、加圧すると直ぐに変形する。 上部切断には、ルーターに円盤砥石をつけて外周をなぞりながら慎重に 切断しなければならない。 又、この装置を最終的にセットするまで、下部の電源線が不必要に曲が らないよう、線の根元をゴム系接着剤で仮固定した方が良い。 各種テストをしているうちに一本の線が根元からちぎれ、装置を一つ オシャカにした(線の途中なら修復できるが根元の切断はお手上げ)。 この装置に発煙剤を1/2〜2/3挿入しての発煙時間は大凡 4〜7分 だった。 この発煙時間を、せめて一時間位にできないものかとの思いを持った。 |
独立増槽 1 |
独立増槽 2 |
機体一体型増槽 |
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増槽タイプ
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下の底版は 成形前の状態 |
前方にゾイデの発煙筒 が立つ |
裏からの状況 |
適正発煙剤
量 連続発煙時間 |
0.7 ml(CC) 14 分 |
1.2〜1.3 ml(CC) 34 分 |
2.5 ml(CC)
184 分 (3時間4分) |
使用電圧 電流 |
11V
0.2 A |
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工作の難易度
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もっとも簡単
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手間がかかる
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比較的簡単
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備考 |
直径10oの真鍮管を 高さ12oに切断。 ボイラー内前部支柱間の 距離が11oの為、Φ10o 管が限界。 鉛ウェイトを大きく切ら なくて済む。 |
側面はハサミで切れる0.1o 真鍮板、底部は0.3 o真鍮 板を使用。 鉛ウェイトを8o切ることに なる。 但し、切り取った鉛の再配置 は簡単。 ゾイデの故障による取り替え が簡単という特徴がある。 |
ボイラー内壁を増槽の天井と側壁に使うので、 前・後部隔壁をt0.1o 真鍮板、底部はt0.3 o 真鍮板を使用。 ダイキャストはハンダが効かないので、機体と真鍮 増槽隔壁との接合は接着剤だけの簡便さがある。 後部隔壁の天井付近に設けた空気穴から発煙剤 が漏れるまでの量は 3ml(CC) 弱だった。 この時の連続発煙時間は驚くなかれ 253分(4時間13分)だった。 |
開通穴はなるべく下に開けることが肝要。 但し、真鍮管の下より少し上の内部に真鍮の底板がある。 この直上で開通穴の下端を止めなければならない。 この開通穴はルーターに棒状ヤスリをつけて慎重に開けた。(詳しくは 工作記 参照) この開通穴の下端が、増槽の底面板の位置を決めることになる。 前表の比較でも判るように、この繊細な発煙装置は実にタフである。 連続4時間や、連続3時間の発煙でもびくともしなかった。 ガラス管の中に巻かれたヒーター線(フィラメント)は人間の髪の毛の太さもないだろう。 相当時間の各種試験を行ったが、びくともしなかった。 さすがドイツの老舗メーカーだけのことはあると感心した。 又、機関車の煙突の上から注射器(医療用ではない、針の先端がフラットなホビー用)で発煙剤を注入する が、中央発煙筒と外周の管の間隔が広く、注入が極めて簡単であると同時に、水(油)位が覗いて見えるの は使い勝手が良かった。 |
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「フォルダンプ」は発煙量の多さがうりであ る。但し、11V〜12V 以上でないとこの特徴が 出ない。 11V 以下だと発煙量はゾイデと大差ない。 組み込む機体によっては走行が不自然な「超 高速」となる。その為に、モーターやギアの 交換を説明書で提案していた。 装置表面は170度の高温になる。 車両の牽引力に直接関係する機体重量は、肉 厚のダイキャスト製が断然有利である。 肉薄のブラス製にはかなり大きな鉛ウェイト が搭載されている筈だ。 この装置は横長なので、鉛ウェイトを半分近 く削り取る必要がある。 ウェイトの補填は大作業となるだろう。 又、この装置の発煙剤注入口は Φ0.5oで、 極細の注射針がやっと入る細さ。機体にセッ トした場合、機体の煙突上部からこの装置の 発煙剤注入口まで約15o位の距離がある。 暗い煙突下部の注入口の確認は困難。 発煙剤注入用注射針をこの注入口に導く特殊 なガイドを自作しなければならない。 |
1.ゾイデの外周はΦ5oなのに対して、機体煙突の内径は5o弱しかない。 この内径を約0.2〜0.3oさらう(削る)必要がある。 2.煙突上部の火の粉止めは樹脂製と金属板の複合となっていた。 ゾイデの白煙吹き出し口の上部に構造物(火の粉止め編み板)があると、 噴煙の状況が変になるし、何よりも問題は、蒸気の当たった金属部(写真 左の中央十字部)に水(油)滴が生じ、それが下に落下してくる。 その為に、中央部に完全な穴を開ける必要がある。 100度を超える高温の噴煙が機体構造物に当たらないので、連続三時間に 及ぶ発煙でも、煙突上部構造物は人肌くらいの温度だった。 プラスチックモデルの機体にもゾイデは組み込める筈だ。 穴開けは外観を少し損なうが、鑑賞派・走行派ともに、上部からの俯瞰を 主にして模型を見る人は先ずいないだろうから、発煙の効果と引き替えに これ位のことは容認出来るであろう。(詳しくは 工作記 参照) |
発煙時間を長くする為、増槽の後部隔壁をヘッドライト基板後部コネ クターのギリギリの位置に付けた。 然し、三時間に及ぶ発煙時間の結果、そこまて要求しない場合は後部 隔壁をもっと前にしてよい。 そうなれば、ウェイトは巾5oのカットだけでよい。側面支柱の前縁 からボイラー室の先端まで6oであるから、余裕で再配分できる。 それでも、連続発煙時間は二時間以上も確保できるはずだ。 |
上の写真は二分割して削除したウェイト。 第一カットの巾を5oにした理由は、このカット部を 側面支柱の前縁に再配分する為である。 次いでのカット巾は必然的に4oとなった。 第二カット部を四分割し、その一部を再配分した第一 カット部の下に貼り付け、その他にも配置した。 増槽容量が少なくてよければ、第二カットは必要ない。 |
モーター後部に電源端子がある。発煙装置の電源には極性が無い。 従って、発煙装置の二つの電源線を各々モーターの電源端子にハンダ付けする。 走行ユニットとボイラーユニットを保守などで外すことがあるので、モーター後部の空間に コードを丸めてコード長にゆとりを持たせておくこと。配線は最も簡単。 但し、ここに供給される電源はカンタムシステムに制御されている。この配線が発煙装置、及 びカンタムに与える影響はテストしていない。 発煙装置の空焚きは禁じられているので、場合によって、発煙装置の電源をOFFしたくなっても 機体にON/OFFスイッチを設けるスペースがない。 |
発煙装置の電源ON/OFFスイッチは炭水車(テンダー)にしか 設けるところがない。 併せて、カンタムシステムとの干渉をなくする為に、台車から カンタム基板に入る集電線の途中を切断して、そこに発煙装置 への電源供給線を分岐接続した。 この線は穴を開けた天板上部に送り、一つの線はON/OFFスイッ チに接続。(極性がないので、どちらの線でもかまわない) 他の線は、機体から伸びてきた線と接続する為だけの小さな真 鍮板に接続する。 機体と炭水車の間はつながったままになる。 発煙装置の機体から伸びる線と、炭水車からの集電線を極小コ ネクターで接続もできるが、機・炭間の接続にコネクターを使 わなかった理由は「工作記」でご確認下さい。 炭水車上部のスイッチ類は、脱着が簡単な自作石炭部品で完全に 隠れるので美觀上の問題は一切ない。 |