鉄道模型 1旧客車

16番ゲージ・旧客車のリアリティー

客室照明・乗客・車間距離・可動通過幌・車体






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機関車発煙装置  客車のリアリティー2(カプラー交換・インレタなど) 

客室(構体、座席、床)、台車、床下機器類の車体の完成度については、Web上で様々な評価が公開されている。
ここでは主として客室照明、乗客、車両間隔、車両間の通過幌(ほろ)に就いてのリアリティー(現実感)に触れてみたい。
リアリティではウェザリングも重要な要素であるが、先人達の巧みな技が公開されているので本項では割愛した。

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客 室 照 明


誰しもが思いつくのは、客室内照明の必要性であろう。
ここでは、TOMIX製のオユ10、スロフ62、KATO製のスハ43、スハフ42の例で室内照明を考察してみる。


 
 最上段は白昼の室内照明なし。
 2段目は白昼の室内照明あり。
 カプラーはKATO の標準のまま。
 別売の可動通過幌(後述)を付けた状態。

 左写真は、薄暮の中の室内照明。
 これが、夜間の走行状態だと、室内照明
 はより鮮明になる。

 未だ乗客無しで、車内壁・床と座席の肘
 掛けの一部しか見えない。従って、照明
 効果の確認が弱いかも知れない。

 車両はKATO の「スハ43」を例示した。

照明装置比較


 
 KATO は天井に白い反射板を取り付ける(下写真参照)。
 極小チップ型LED が中央に2個配置され、構体・妻側まで光りが廻る。

 TOMIX は砲弾型LED が両妻側につき、照明板も短い。その上、LED の
 ソケットより後ろには光が廻らないので妻側は無灯火となる。

 ← チップ型と砲弾型LED の大きさの差は歴然としている。
 KATOの照明基板は独自設計され、実にコンパクトに纏められている。
 それに比べてTOMIX のLEDと基板の部材は通常の市販部品を流用している
 だけの安易な造りになっている。
 一世代以上も古い設計のように思われる。
 KATO の特許問題でTOMIX は遅れを取ったのであろうか ? 


KATOの照明通電構造 (スハフ42の例)
 シンプルで信頼性の高い通電構造 ( HO LED室内灯クリア・電球色)
 取付け方はKATOの説明書参照のこと。




 台車から集電した電流は、照明プリント基板左右の通電シューに差し込まれた集電板を通してチップ型LEDに電気が供給される。
 集電板は、座席床とウエィト兼通電板の重なり部に小さなマイナスドライバーをねじ込んで僅かな隙間を開けて集電板を差し込む。
 差し込んだ集電板は簡単には動かない位に強力に圧接され、接触通電の不安が起こらない。
 床板・座席床ユニットに構体(側・妻・屋根)を重ねて差し込むと、調整の必要もなく、自然に集電板は基板左右の通電シューに差
 し込まれた。
 基板左右の通電シューにはV字の長めの溝があり、集電板の位置が少々ずれていてもこれを巧く導く案内用のカーブが設けてあって
 集電板先端を容易に受け入れてくれる。
 然も、集電板を挟み込む溝には強めのスブリング圧接が効いている。
 金属どうしの接触通電はとかく接触不良を起こし易いが、このスプリングの圧接効果で接触不良を起こしにくい。
 接触通電は4ヶ処(照明基板に2ヶ処の接触通電があるので厳密には6ヶ処となるが、基板にある接触通電は殆ど無視できるレベル)し
 かなく、しかも圧接力が強く信頼性の高い通電方式と言える。更にKATOの照明方式は実車通り天井に直付けされているので、デッ
 キ部にも照明が廻る。
 シンプルで通電不良が起きにくい優れた構造設計だと言える。

TOMIXの照明通電構造 (スロフ62の例)
 稚拙・劣悪な通電構造 (室内照明ユニットEセット0795 電球色 )




             座席床の裏に出る通電接点                座席通路に立つ照明ユニット支持ステー
     室内照明用接点シューは4ヶ所。テールランプ用接点シュー4ヶ所       と、むき出しの通電ステー

接点シューは真鍮薄板を焼き入れしたもの。座席床下には室内照明用とテールランプ用の8ヶ所の接点が出る。
これらは、台車が付く床の左右に付けられたウェイト兼通電板に接触通電するようになっている。
これに加えて、照明側シューと床下側シューの4ヶ所を接触させて通電しなければならない。
「金属のバネ弾力」を利用した接触通電は極めて信頼性に乏しい。これはTOMIXのオユ10の事例で信頼性の無さを後述する。
又、チップ型LEDに比べて大きな砲弾型LEDを採用していて、世代の古さを感じる。その上、この電球の周囲への光線漏れを防ぐ為に
LED球全体を紙テープでユーザーに覆わせるというオマケまで付いている。とても商品とはいえない。

見栄え
 座席通路に照明ユニット支持ステーが1〜2本立ち(車種によって異なる)、通電ステーも丸見えとなる。
 例え車外から見え難いとはいっても「リアリティー」からして致命的な欠陥である。
煩雑なセット
 説明書通りに簡単にセットしょうとすると、照明側と床側のシューの反発力で上部照明ユニットがへの字に湾曲して位置が定まらな
 い。先ず、床側のシューを照明側シューに触れない程度に押し下げておく。次いで、照明ユニットを照明ステー、又は照明ステーに
 代わる室内隔壁に粘着テープなどで固定する。その後、床側シューの上部を指や爪楊枝などで照明側シューの突起部に触るように湾
 曲させて押し上げて接触させる。この時、床側シューの押し上げ方によって床側シューが進行方向の左右にブレて照明シューから外
 れたり、互いのシュー巾が僅かしか接触しないこともある。実に危なっかしい接触である。
 こうした不安定な接点接触が12ヶ所もあるということは、接触不良を起こす可能性が極めて高い。
接触通電の宿命
 車両の走行振動によって接点部分にスパーク(火の粉)が発生して通電を妨げる。経年使用されたTOMIXのオユ10を分解してみてこれ
 が確認された。
照明不足
 照明ユニットの短さに加え、両端にある照明基板とソケットの関係から妻側の乗降デッキや車掌室などに照明が廻らない。

以上四点から、TOMIXの室内照明構造、及び通電手法は根本的な設計ミスと言わざるを得ない。

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乗 客



無人客車(左)と乗客のある客車(右)のリアリティーの差




 車室内に灯りが点けば、車両の外側から見ても、無灯火の時と比べて車室はより目につくようになる。
 客車は人が乗ってこその客車である。灯りを点けた無人の客車が走っている光景は余りにもリアリティーに欠けてしまう。
 そこで、当然のことながら乗客を乗せることになる。
 問題は乗せる人数とコストとのバランスであろう。
 余程のローカル線でない限り、定員80人の車両に乗客4〜5人というのは現実的ではない。
 いきおい、50人以上は乗せたいところである。
 1/80、1/87(HO)の乗客人形が六体で 1,900円(315円/一体)、安い物でも二十四体で 1,600円(66.6円/一体)となっている。
 これだと安いものでも 3,300円超(50人/1両)、高いものは 15,000円(50人/1両)を超えてしまう。
 これでは乗客を配置したくても逡巡してしまう。

 

 今回、三百体で 5,000円という搭乗者人形を見つけた。四十体のボーナスが付き送料無料だった。
 建築・展示用人形の総合商社 「YFSトレーディング」 が販売している。
 16.6円/一体と破格の値段である。ボーナス40体を入れると14.7円/一体となる。これだと思い切り乗客を搭載できる。
 これを購入して、車両に積載を始めた。
 乗客の配置を始めて、構体と台枠・床が実車の縮小比率よりかなり厚いプラスチック製客車に起因する問題が二つ発生した。

 一つは、床板が厚く、必然的に座席の高さが低い為、人形をそのまま座らせると人形のお尻が高くなり、座席に着かなくなる。
  無理してお尻を座席に着けると人形は反り返ってしまう。
  従って、人形の足首から少し上をニッパで切り離し、漸く座席に落ち着いた。

 
二つ目は、新幹線や私鉄の広軌車両なら男性客の二人掛けが可能と思われるが、狭軌車両の旧客車では構体の側が厚い為に男性客の
  二人掛けは物理的に無理だった。ただでさえ側板が厚いのに加えて、側の内側に透明の窓板がはまる為に更に座席の巾が狭く
  なっているからである。
  男性と身幅の狭い女性のペアでしか二人掛けができない。


 接着に就いて
  人形、車両ともにプラスチック製なので、タミヤのプラ接着剤(セメント)で乗客を座席に接着した。
  充分に乾燥させたにも拘わらず、上部構体と床ユニットを結合する為に座席床を逆さまにすると、都度数体の乗客が外れ落ちる
  現象が頻発した。数両の車両で再接着を繰り返し行なわなければならず、些か神経衰弱になりそうだった。
  タミヤなどの通常プラ接着剤では接着力が弱いようだ。
  そこで、販売元の「YFSトレーディング」に有効策がないかとの問い合わせを行った。

  極めて丁寧な電話応対だった。更に、この件でテストまでして頂き、写真付きE-メールでその結果と具体的アドバイスを頂戴し
  た。大変参考になったので、ここにご紹介しておきます。
   昨日はお問い合わせありがとうございました。私自身も、パワーエース(注: アルテコ パワーエース 強力瞬間接着剤)を使
  って検証致しました。画像の通り、接着後半日放置した後逆さにして、試しに振り回しても大丈夫でした。
  接着している人形を観察すると、お尻や背中に服の造形による凹凸がございます。この凹凸面と座席がぴったり平らな面で接着
  すれば、一般的なプラモデル用接着剤でも接着強度が保たれます。
  ただ、如何せん接着粘度が弱いゆえに、ご指摘の通り剥がれやすい個体もあります。
  理想はフィギュア本体の接着面を真っ平に削って整える事でありますが、数百体この作業を行うのは大変です。
  解決策といたしましては、ゼリー状の瞬間接着剤を使用されるのがベストかと存じます。
  フィギュア本体の凹凸をカバーする、粘性のある接着剤がベストかと。
  常連のお客様が(人形を搭載する作業は)ある意味パズルと田植えだよね、とよく仰っている意味がよく分りました。
  お役に立てましたら幸いです  
 
 
 このアドバイスに従い、剥がれ落ちた乗客のお尻と座席に残るプラ
 接着剤の残滓を球形(ボール状)ヤスリで削り落とし、瞬間接着剤で
 再接着した。この時、乗客のお尻も平らにした。
 ルータービットも色々あるが、鋭角円錐ヤスリより球形ヤスリが断
 然適している。アッという間に削れる。接着も確実になった。
 事務的で無機質な応対しかしない企業が多い中で、「YFSトレーディング」はユーザーオリエンテッドな信頼の置ける企業だった。
 これから乗客搭載をお考えの方は是非ご参考にして下さい。

その他の注意事項
 
 三百体の人形の中、衣服の裾を広げた女性が約五十体入っている。

 この人形は例え広げた裾をカットして座席にセットしても座高が高い
 為に、他の乗客の高さを超えて不自然になる。
 車載には無理だが、駅ホームや待合室のベンチなどに使えばよい。

 四十体がボーナスとして付いてくるので、車載に使える乗客の数は
 当初の三百体近くになって有効数は変わらなかった。

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車 間 距 離

国鉄・JRの狭軌鉄道の客車間隔は 50p となっている。
これを1/80(16番ゲージ)、1/87(HOゲージ)に換算すると車間距離は 6.5o となる。
一方、狭軌鉄道営業線の最少曲線半径は 160m と規定されていて、16番ゲージに換算すると半径 2m(2,000o) 以上の曲線レールでなければならない(詳しくは前ページの「工作記」最下段参照)。
ところが、日本は住宅事情が悪く、大曲線(緩やかなカーブ)のレールを一般家庭で使うことが困難で、エンドウの最大曲線R-1085のレールでも、国鉄・JR狭軌営業線の半分の半径という急カーブ線路を使うのが現実だった。
実際はR-750(o)以下の急カーブ線路を使っている方が多いのではなかろうか。
この急カーブに対応して、客車間隔もかなり大きく開けられている。
KATO と TOMIX の16番客車の標準車両間隔は以下のようになっている。


 KATO 車両附属カプラーの車両間隔は実機の倍も開いている    TOMIX 附属ケーディーカプラー#5 の車両間隔は実機の倍弱 

KATO のカプラーを IMON HO-101カプラーに交換すると、実機と同じ車両間隔になった。

       KATO の車両間隔は余りにも広すぎる         IMON HO-101カプラーに換装。実機と同じ車両間隔になる

TOMIX のケーディーカプラー(KD)#5 をIMON HO-101カプラーに換装すれば実機と同じ車両間隔となる。

         KATO の車両間隔より2o狭まる          IMON HO-101カプラーに換装。実機と同じ車両間隔になる


車間距離に密接するカプラーについては「カプラーの交換」を参照して下さい

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可 動 通 過 幌 (ほろ)



IMON HO-101カプラーに換装した後の可動通過幌のセット状態。
同一メーカーでも車両による台車の高さのバラツキがある

客車間には、乗客が安全に車両を移動する為の伸縮幌(ほろ)が付いている。客車の妻側に各々付いていて、連結された車間の中央で
各々の幌が結合されている。
ところが、16番ゲージの旧客車にはプラスチック製の疑似固定幌が申し訳程度に付いているに過ぎない。
実機と同じ車間を6.5oとしても、固定幌間に隙間が空き、向かいの景色が見えて興醒めする。
まして、車間が広い連結では何をか況んやである。無人の客車以上に現実感(リアリティー)がない。
幌の自作を思案している中で、O、OJゲージ用に可動通過幌が開発されていることを知った。
そのサイトに辿り着くと、HOゲージ用も受注生産されていることが判り即座に発注した。
HINODE MODEL というO、OJゲージを中心に鉄道模型や部品を製造販売している工房だった。

 
 可動幌は和紙、幌枠は真鍮薄板を黒染めして
 ある。当時の幌は黒が正しい色。
 客車模型の車間距離がかなり広い現実を踏ま
 え、二個が一組となっている。
 左の写真はその内の一つ。
 写真の左は正面と斜め。
 中央より上に爪のある手前の枠は相手の枠と
 接触する側。
 写真の右は幌が持つ自然の復元力で伸びた状
 態と手で縮めた状態。相当な伸縮力がある。
 実に精緻にできていて、技術力の高い工房で
 あることが判る。
車両間隔が広い連結では、双方の車両にこれを装着することになるが、曲線では幌の左右が伸縮変形し、直線に戻るとその変形が修
復される。和紙の幌が持つ復元力で幌どうしの密着性は充分に確保できるものと思われる。
ただ、筆者は実機と同じ比率の車間距離6.5oを採用したので、連結双方の車両にこの可動幌を着けることは物理的に無理があった。
そこで、連結車両の片方だけにこの幌を着け、本来中間に位置する爪のある幌枠を相手の車両に密着させる実験を行った。
連結相手車両への幌の密着性と、曲線から直線に戻る幌の自然の復元力がこのままでは少し弱いことが判った。
相手の車両への密着性の向上と伸縮復元の追随性を良くするために「押しバネ」を可動幌に組み込むことにした。


 押しバネは線径と外径寸法で押す力が違ってくる。弱すぎても効果がないし、強すぎると和紙の幌を破損する恐れがある。
 各種実験の結果、線径2.35、外径4oの押しバネが最適だった。材質はステンレス製である。
 長さは10o強あれば良いのだが、最も近い規格で16oのものしか無かった(Amazonにて購入。送料込みで\400円弱/1本)。
 これを10.5o位に切れば程良い圧力になった。極細ステンレスバネの切断はニッパより百均のハサミの方が良く切れる。
 切断側のバネは斜めになったままなので、切り口を長さ方向で90度位にペンチで修正する(バネの説明文に書いてある)。
 押し板の巾と高さは、可動幌内にセットする時の幌枠の内側の巾と、和紙幌の凹みに押し板の巾が引っかかる寸法で決まる。
 固定板と押し板に着けたプラ丸棒は不安定なバネの逃げを防ぐもの。押し板側ではバネをゴム系接着剤で必ず固定する。
 押し板の右に突き出ているプラ棒は、バネ付き押し板を可動幌内にセットする時、押し込んだり、回転させて幌の凹みにセットす
 るのにこの棒を指でつまんで作業を行うと実に効率が良い。セットが終わったら、押し板外側の根元からニッパで切り取る。

固定板の取付け

事前の妻板加工



 固定板を妻の車内側に取り付ける前に妻下部の段差を幌枠の巾で削って段差面をツライチにしておく必要がある(写真右)。
 取り着ける可動幌枠の巾は、既についていた固定幌枠の巾と一致しているが、可動幌枠の長さが若干長く、このままでは既定の幌
 枠段差の中に収まらないからである。
 ルーターの回転ヤスリで簡単に凸部は削り取れる。
 又、既定の幌枠段差の上部形状が車体メーカーによって違う。それに合わせて、可動幌枠の上部加工が必要になってくる(後述)。

固定板を構体・妻の車内側(裏)に取り付ける

 
 
 KATOスハフ42の妻裏には、妻表面と同じ段差が縦に走る。
 固定板の巾はこの埋め込む段差の巾で決まった。
 ただし、KATOの妻裏に全て段差がある訳ではない。
 又、TOMIXの妻裏にはこの段差がない。
 その場合は接着力を強くする為に固定板の巾をもう少し長くした方が良い。

 写真左の固定板上の赤の点線は固定板の高さをこの位置まで高くする方が
 接着力で好ましいが、車外からデッキの窓越しになるべく固定板が見え難く
 するように高さを下げた。

 固定板の車内側にはつや消し黒を予め塗装しておいた。
 

可動通過幌の取付け

 可動幌枠の加工 
   車体メーカーによって固定通過幌を取り付け
 た妻の上部段差形状が違う(上掲写真)。
 KATOは楕円、TOMIXは直線となっている。
 可動通過幌枠の上部形状と合わない。
 そこで左のように、枠の向こうに着いている
 折りたたみ和紙の接着境界ギリギリの処を見
 定めてニッパでカットする。 

 可動幌枠の取付け

 幌枠と段差の狭い面積部分を瞬間接着剤で接着する。これには一発勝負の危険が伴い工夫が要る。
 既述したように、妻の下部段差の修正、可動幌枠上部の加工をした後、幌枠段差に可動幌枠を埋め込む。
 そして、写真左のように縦の接合部に粘着テープをしっかりと貼る。
 次いで、反対の幌枠を写真中央のように浮かす。
 この状態で赤色の点線で示した位置に、下記接着剤塗布ツールを使って接着剤を薄く塗布する。

 塗布が終わったら、浮かし止めテープを外し、浮かした幌枠をゆっくり元の妻段落位置に埋め込む。
 幌枠を戻して行く時、浮かした枠に当てた指で、縦位置固定テープで止めた側の幌枠を妻の落ち込み段落に押しつけながら戻して
 行くとほぼ失敗なく所定位置に接着できる筈だ。

接着剤塗布ツール
 
 接着剤をチューブのままや、先端ノズル東急ハンズなど
 で別売)
付きで使用するのは厳禁。
 接着液量のコントロールが難しい。
 液量が多いと接着力が弱まったり、周囲に不必要に
 はみ出したりして、思わない事故を引き起こす。
 左写真の瞬間接着剤塗布ツールは優れもの。接着剤を
 一旦液皿に出し、塗布棒に接着液をつけて塗布する。
 先の尖った塗布棒はデッキの手すりの緩みを点付け
 するのに便利。下の二本は面塗り用。

 その他の取付け法
 一つは、幌枠の外形寸法と同じ薄いプラ板を切り出す。幌枠とこのプラ板を瞬間接着剤で接着する。
 妻側の段差に埋まるプラ板を同様に切り出し、妻の段差にプラ接着剤で接着する。妻の通過用開放部が全面閉ざされる。
 その上で、双方のプラ板に両面テープを張って接着すればかなり強い接着力が得られると思う。
 
 二つ目は、幌枠と妻の段差部分にトンボ鉛筆の水性糊を点付けして幌枠を所定位置に仮止めし、妻の裏から幌枠と妻の段差部分と
 の接合部に瞬間接着剤を流し込む方法もある。この方法が、妻段差と幌枠の位置ずれがなく安全性に優れているかもしれない。
 ただ、妻の裏から接合部に接着剤を流し込むのはテクニックが必要となる。

幌内への押し板のセット


 押し板のセットは上写真の通り。作業棒を指で掴んで、バネの先端円の中に固定板の丸棒突起が入るようにして幌の中に押し込む。
 縦の押し板が手前の幌枠を過ぎて蛇腹幌の最初の溝位置にきた処で作業棒を90度捻って、押し板の巾の両端が幌の溝に掛かったと
 ころで指を放す。
 押し板が幌枠の上下の中央にくるように微調整をする。このセットが終わったら、押し板が不用意に回転したり上下にズレないよう
 に幌の溝と押し板の接触部を接着剤で固定する。筆者は「とんぼ鉛筆の水性のり」で接着した。
 固定が終わったら、作業棒を押し板の根元で切断する。作業棒の便利さが体感できると思う。

可動通過幌の追随性と復元力

曲線レールでの走行テスト



  直線走行に於ける可動幌の相手連結車両への密着性は何の問題もない。
 直線から曲線への幌の追随性、曲線から直線への復元性をENDOとKATOの最大曲線レールでテストした。
 相手車両への追随性、曲線から直線への復元性に何等問題なくスムースに走行できた。
 KATOの最大曲線R867レールも、客車どうしが「ヘの字」になるのを我慢すれば、充分に走行できることが確認できた。

 ただ、R800以下の急曲線レールでは車両どうしが触れあって走行が難しくなる。
 一般的にはR750以下の曲線レールを使われている方が多いと思われるので、その場合は車間距離の妥協案が必要になってくる。

急カーブの走行と車間距離リアリティーの妥協点

 TOMIXの場合
 
 TOMIXの場合、標準でついているKDカプラー#5と、IMON HO-101
 カプラーに換装した車体を交互に連結する。
 そうすると、車間距離は8.5oとなる。
 TOMIX標準の連結間隔11oより2.5oも車間が縮まり実機のリア
 リティーにかなり近づくことになる。
 恐らく、R750の急曲線レールも走行できる筈である(筆者は未
 テスト)。
 走行の実利と見栄えの両立を図るには最も妥当なところでは
 ないだろうか。
 
 車間8.5oの場合は幌内押しバネの長さ調整が要る。

 KATOの場合


 KATO標準のカプラー連結では、車間距離13oだったが、連結相手がIMONカプラーの場合、車間が10oに圧縮される。
 3oの差は大きく、TOMIX標準どうしの連結より1o圧縮される。
 押しバネを内蔵した可動幌一個使用の場合にどれ位の車間距離に対応できるかを見極める為のテストが上左の写真である。
 この結果、車間が8.5oの場合は可動幌を各々の車体に付けるには少し無理があり、幌内の押しバネを少し長く(11o強)して一個
 の幌で対応するのが良いようだ。
 車間が10o以上空く場合は、各々の車体に可動幌をつけることになる。
 各々の車両につけた幌の圧縮状態が上右写真である。幌はかなり圧縮され、車間10oが相互に幌を着ける最少限界距離に近い。
 幌の復元力で中央の幌どうしの接触部がかなり圧接されていることが判る。当然押しバネなど必要無い。
 車間距離10oだと、かなりの急曲線レールに対応できる筈だ。
 いずれにしても、KATO標準の13o車両間隔はリアリティーからして開き過ぎだ。車両間隔はせめて10oにはしたいものだ。
 この10oの車両間隔でも、可動幌をセットすると見違えるようにリアリティーが増す。
 この可動通過幌の装着は、客車のリアリティーにとって必須条件であろうと思っている。

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車 体 の リ ア リ テ ィ ー

幌吊り・車内仕切り扉・手すり




 
 車体の外見で目立つのは幌吊りである(写真上の左と中段)。
 TOMIXは別部品として妻に差し込むようになっているが、KATOは妻と一
 体の簡略表現となっている。
 妻の両端につく「雨樋(とい)」もTOMIXは立体的。KATOは平坦。
 これは通過幌側の扉も同じ(写真中段)。
 車内扉(写真上段の右と左写真)の表現もTOMIXは立体感を出しているが
 KATOは平坦表現に止まる。
 デッキの手すり表現も両者によって異なる(写真上段左)。

ジャンパ栓

 ジャンパ連結器の状態もメーカーによって差がある。
 TOMIXではジャンパの造りが細密で、ブレーキ用エアホース、暖房用SG(Steam Generator=蒸気発生)管が幌吊りと同様に別部品と
 して貼付される。これも精密にできている。
 KATOはジャンパと一体となったエアホースのみ。形状もシンプルで簡略である。

 車体に関しての概括は、TOMIXは精密さを追求し、KATOはコスト低減で略式な造りが目立つ。
 車両の外観リアリティーでは圧倒的にTOMIXに軍配が上がる。
 今後の課題は、客車間のエアホースと、車種によっては蒸気暖房ホースのつながり表現をどうするかである。


結果としてのウェザリング


半光沢クリアコートにより、光沢を失い色褪せた色調になったKATOスハフ42の車体

 
 KATOのインレタが余りにも粗悪過ぎて直ぐに剥げ落ちる為、KATOの全ての客車に半光沢クリアを吹いた。
 編成するTOMIXの車体と「青15号」の色調がかなり異なってきたので、先ずTOMIXのスロフ62(写真右)にクリアコートを吹いた。
 実物では目に見えて「色褪せた」色調になった。
 左のオユ10は中古品。塗装は少し輝きを失っているが下の台車の黒の光沢がオリジナル製品のままであることを表している。
 写真では色調変化が判りづらいが、上写真の台車の変化が判り易いと思う。

 製品のまま(工場ロールアウト状態=上写真左)に比べて、右のスロフ62は風雨にさらされて色褪せた感じになった。
 ウェザリングを目指したものではなかったが、ついでに台車のブレーキシューに錆び茶を差した。
 この写真撮影の後、オユ10も半光沢コーティングをした。
 ただ、TOMIX車両の屋根が半光沢クリアを吹いただけでは光り過ぎるので、半光沢灰色を調合して屋根の色調をKATOの屋根に合わ
 せた。
 この程度のウェザリングでも、ピカピカの車体よりかリアリティーが増したように思える。


カプラーの交換、インレタなどの関連は次ページを参照
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