日本刀の考察 日本刀vs拳銃対決 0

報道とは      日 本 刀 vs 拳 銃 対 決

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マ ス メ デ ィ ア の 実 態

( 日 本 刀 拳 銃 対 決 放 送 の 例 )

 「トリビアの泉」という番組で「日本刀VSピストル真剣勝負の衝撃映像」という番組があった。
 銃器と刀では勝負にならない筈だが、日本刀と拳銃でどんな勝負をするのかと興味をそそられて観る事になった。
 結論から言えば、「物理的にあたり前の事が何故衝撃映像なのか ? 」と、タイトルと中身のギャップに呆れ果てた。
 
 観る側は「日本刀を持つ人と拳銃を持った人間との戦い」と思っていた。
 何故なら武器個体が単独に戦う事などあり得ないからである。
 人目を惹起するタイトル(キャッチ)と中身が違う事は色んな場面でよく見かけられる。一種の詐欺行為である。
 この番組に正確なタイトルをつければ、「鋼と鉛はどちらが硬くて強いか」というもので、小学生の理科の知識の範疇といえる。

 より正確なタイトルは、「楔(くさび)状の鋼の先端に鉛を高圧力で打ち付ければどうなるか ? 」である。
 断面が楔状の鋼(鋼より柔らかい鉄であってもよい)であれば、斧、鎌、包丁の類でも結果は同じであったろう。
 必ずしも日本刀である必要は無かった。

 然し、斧・鎌・包丁等では人の関心も呼ばない = 視聴率が稼げない = ので、こんな詐欺紛いのタイトルをつける訳である。
 鋼と鉛では比較にならない程の硬度差がある。鉛はカッターナイフでも削れる柔らかさである。
 日本刀の用法は、あのように刀を固定して、斬られる相手が都合よく刃筋を立てた状態で飛び込んで来るものではない。
 対決する双方が動き回る中で使われるものである。
 再度言うが、あの番組は「鋼」vs「鉛」という通常では話題にする価値も無い単なる物理的強度実験に過ぎない。
 然も、誰もが知っている公知の事実であり、射出圧力が強い程、鉛弾が分断され易いのは当たり前である。
 「日本刀vs拳銃対決」などと云うタイトルは、素人騙(だま)しともいえる一種の詐欺紛いの誇大表現である。

   ※ マスメディア=情報伝達媒体=新聞・雑誌・放送など。これら媒体を介して事実もしくは事実と思われる情報の提供行為全てを「報道」と云う


刃 筋 を 立 て る と い う こ と

   刀の断面中心軸と同一平面上で刀の斬り込み軌道(円弧運動)が一致した時、刀は一番斬れるし、刃の損傷を受け難い。
   こうした刀の操法を「刃筋を立てる」と云う


 刃筋を立てる


 今回の報道は、刀を固定して、弾丸が刀身断面の
 中心軸刃先延長線上から飛び込んでくる

 左図とは刀と物体の動きが逆だが
 原理としては同じである



刃 毀 と 刀 身 曲 が り の 原 因

    刀の断面中心軸と刀の斬り込み軌道(円弧運動)が同一平面上にない時、刃や刀身には斜め或いは側面の応力が掛り、
    刃毀と刀身曲がりを起こす


 刃筋を立てられない


 当時の軍刀使用報告で、常に刀身曲がりや刃毀を起こしているのは、
 普通の使い手や軍刀操法に経験を持つ人でも彼我が相互に運動する
 戦闘では仲々「刃筋を立てられない為」である

 彼我の変化に対応して刃筋が常に立てられるようになるには相当の
 修練とコツが必要だという事である



 刀は構造上、側面と棟(峰)からの応力に弱い。鋭く薄い刃先は特に側面応力に弱い

 楔状断面を持つ鋼 (日本刀などの刃物) と拳銃弾の強度実験としても内容が偏向し過ぎている。
 拳銃には「輪胴回転式」と「自動装填式=オートマチック」の二種類があり、一般的には発射時のガス圧を遊底の後退に使うオー
トマチック(厳密にはオートローディイング = 自動装填)は、輪胴回転式に比べてプレッシャーが劣るといわれる。
 使用拳銃は、コルトM1911A1 (1911年発売のM1911の改良型) という45口径オートマチックピストルである。
 軍に採用された物をコルトガバメント、或いはGIコルトという。
 大口径拳銃だが、現代のS&Wオートマチック等と比べて威力の古さは否めない。
 より強力な拳銃には輪胴回転式357マグナム・44マグナム拳銃がある。
 又、弾丸には「鉛弾」と「被甲弾=鉛表面を銅系金属で覆った弾」がある。
 人体に食い込んだ時に弾頭がひしゃげて人体により大きなダメージを与える鉛弾の典型例はダムダム弾 (弾頭先端を平らにして十
字の溝を付ける=国際法で禁止) である。
 この外、徹甲弾もあり、銃の用途や標的に依って使い分けられる。

 日本刀vs拳銃弾対決というからには例え「物理実験」としても
 @ 少なくとも「鉛弾」と「被甲弾」という異種弾丸の双方を使って試験すべきである。
 A もっと重要なことは、刀の側面、峰にも射入し、繊細な刃の部分には特に射入角を変えて試験するのが当然であった。
 
 この番組は、日本刀の刃部が最も有利となる刀身断面中心軸と弾道が一致するよう、態々拳銃を機械的に厳密に調整セットした。
 幾つか考えられる実験要素の内の、日本刀に最も有利なたった一つの要素のみを採り上げた訳である。
 弾道と刃部断面中心軸が完全一致する事で、日本刀にとっては理想的な試験となっている。
 番組制作者は「日本刀の強靱さ」を強調したかった為に「試験の一要素」しか放映していない。
 刃部への斜めの弾丸打ち込み等、日本刀に不利な試験は全て頬被りである。公正な実験とは云えない。
 何も知らない人は「日本刀はすごい」と思っただろうし、実際、コメンテーターも大袈裟にそう云っていた。

 ここに、マスコミ報道のまやかしがある。
 制作者の意図に基づき、視聴者に故意に偏向した知識・印象を与えようとしている好例といえる。
 単なる鋼と鉛の物理実験に過ぎないこの番組が「日本刀の実態」を物語っていないことは云うまでもない。
 報道とは、制作者が事実という素材を「加工」して創った「虚構の物語」である・・・と云うのは蓋(けだ)し名言といえる。
 マスコミ報道に対しては、視聴者側で常に報道側の意図と偏向を見極める見識が必要とされる。

1

も う 一 つ の 検 証



オダ・クザンのカスタムナイフ(6インチ、154CM,ロックウェルCは62)のまん中に、S&W・M10(4インチ)で、
.38スペシャル158grラウンドノーズをぶつけてみた。距離は8フィート。見事に弾丸は真っ二つになった。
このナイフのロックウェル硬度62は、新刀の刃部硬度とほぼ同じ。超高速度撮影が見せる世界である。(「月刊GUN」より)
(写真ご提供: 剣恒光 様)
  ※ 上掲高速度写真の著作権: この写真は30年近く前、「月刊GUN」誌(国際出版)に掲載されたものです。
    著作権者探索の為、国際出版の当時のスタッフが移動された「ユニバーサル出版社」、「ホビージャパン社」に連絡を取り状況を
確認
    しました。結果、当時の国際出版に勤務されて状況に詳しい(有)KTW社の和智香社長様から以下の貴重な情報を頂戴しました。
    「撮影場所は米国のメリーランド州ホワイト研究所。テキサス在住のターク高野氏が依頼して、撮影料は国際出版で支払った」
    この情報から、著作権は2011年12月5日に解散した国際出版(法人)にあった事が判明しました。
    然し、元
の代表者に連絡取れず、著作権の状況は不明です。法人所有では著作権消滅の可能性もあり、筆者の責任に於て転載しました
    
KTW社・和智社長様をご紹介戴いた「ホビージャパン社」アームズマガジンの岩田様に御礼申し上げます。
    尚、この写真の著作権が継承され、且つ継承者をご存知の方が居られましたら弊サイトにご連絡下さい(2014_4_7)


     
2

視 聴 者 の 資 質 に よ る 解 釈 格 差

      同じ番組を観ても、視聴者の知識・見識に依って全く異なる解釈が生まれるという典型例

識 者・見 識 派 の 解 釈


 8月2日、海外に頻繁に行かれているFA様から日本刀や隕鉄刀に対する考え方の貴重なメールを頂戴した。
 海外に多く存在する軍刀(昭和刀)を具に見聞された所感には、日本が再考すべき基本的問題が提起されていた。
 このご指摘には弊サイトも全く同感であり、機会を設けて皆様に是非この問題をご披露したいと思っている。
 そして、そのメールに次ぎのような所見を述べられている。

 『---- 略 --- 又、フジ系列の人気情報番組である「トリビアの泉」にて放映された「日本刀vs拳銃対決」(要は鉛材vs鋼鉄
材の対決/番組的には大好評だったらしく、その後日本刀vsウォータージェット加工機編にまで発展した)の内容は、低初速な45ACP
※1で、しかもワッドカッター(標的射撃 時に弾痕をきれいに残すための平頭弾頭)を使用した時点で“飛来する弾頭が真っ二
つ”という画像を撮りたかったであろう番組製作サイドの“演出”の存在が明瞭に見て取れた。

 恐らく、「トリビア」番組制作者は70年代のTVアニメ「ルパン3世」での石川五右衛門vs次元大介の対決をイメージしたのだと思
われるが、全く同じ種類の実験が80年代に日本の銃器雑誌である月刊「Gun」誌上で行われている。
 この実験で使用されたのはクロモリ鋼のハンティング ナイフと、やはり45ACP弾だったのを考えると、「トリビア」での実験のオ
リジナルアイデアは、ここから来ているようにも思われる。

 ワッドカッター弾とは、室内射撃場内で使用する際の跳弾防止と、鉛材リサイクルを目的として非常に柔らかい鉛材で出来ている
ので、日本刀でなくてもピアノ線や工業用カッターの刃に向けて発射しても同じ結果になっただろう。

 せっかく実験するのであれば、最低限 真鍮系素材で全被覆されたFMJ弾頭※2を装着した、各国で軍/公用として広く使用されてい
る9mmx19弾程度の高初速拳銃弾か、よりシビアな条件で銃と対決させるのであればAK74型自動小銃の5.45mm小銃弾(鉛材使用節約と、意図的に横転弾を発生させ易くするために弾頭芯材に軟鉄が使用されている)を使用するべきであった。-----  略 ----』

                     ※1 45口径(45/100インチ=直径11.4o)オートマチック・コルト・ピストル弾  ※2フル・メタル・ジャケット(全被甲)弾

 FA様は、銃器や刀剣に関する造詣が深い為、冷徹にこの番組の何たるかを即座に見抜かれている。誠に当を得た見識である。


無 知 又 は 思 想 的 偏 向 者 の 解 釈


 5月28日、あるサイト開設者の方から別件メールが入った。
 末尾に「日本刀vs拳銃」の件(くだん)の放映に触れられ、『普通の人は「日本刀は凄い」で終わるのに、だから日本刀で百人切れる
という「バカ」が早速あらわれました』 (原文のまま) と記してあった。誰が何処にとは書かれていなかった。
 素人は騙(だま)されてそういう人もいるだろうな位に思っていたが、それと思(おぼ)しきサイトを見つけ、その内容に唖然とした。
 余りにも内容が短絡で酷(ひど)い為、日本刀や拳銃弾に疎い人達がこの手の人間に惑わされないようにして欲しい事と、この主張者
の「レベルと実態」を象徴しているので、そのサイトに掲載された原文の一部を引用し考察する。

 『 この実験には番組作成者がまったく意識していなかった重大な意味がある。言うまでもなく、百人斬り事件との関係である。
 百人斬り殺人競争を虚報と決め付けた---勢力は-----執拗に日本刀の脆弱さを主張してきた。
 --------大嘘を吐いたのだ。
 フジテレビ(あのフジサンケイグループの)が全国に放映してくれたこの実験は、日本刀の性能に関する否定派の嘘を文字通り一
刀両断にしてしまった。まさに快挙である 』(検証の為に当該サイトより原文引用)

 この実験の偏向と刀の操法は先述した。鉛を断ち切った刀だから100人斬れるとは余りに短絡的であり、日本刀と日本刀操法に全
く無知である。真剣道・試刀道実践者がこれを読んだら「腰を抜かす」か「一笑に伏される」内容である。
 無知というものの怖さ、或いは主張者のなりふり構わない恣意的解釈が明確に読み取れる。

 成瀬関次氏は「実戦刀譚」に刀柄の神秘性として“切れ味の神秘さが、日本刀の刀身に単独に質的に存在しているとは考えられな
い”とその理由を詳述している※1
 極めて重要なことは「刀の物理的性能」と「使い手の技」が一体となって武器性能の答えが出るという事である。 
 
 物を斬るには「刃筋※2=刀の切り込み角度と刀身の軌道」・「間合い」・「気力」の三要素が大変重要と云われる。 ※2 上記参照
 これを間違えると、どんな刀でも曲がったり刃毀(こぼれ)を起こしてしまう。
 刀を曲げたり刃毀を起こさないように「刀を使いこなす」為にはかなりの修練(居合三年と云われる)と経験が必要となる。
 青龍刀や西洋剣との違いである。
 この主張者は「刀身の物理的性能」のみしか採り上げていないし、重要な「使い手の技」・「日本刀柄周りの構造上の欠陥」には
一切触れようとしない。刀身強度の解釈にしても先述した如く短絡的で稚拙である。

 この主張者は、特定目的に基づき、他人の著書やメディアの主張を漁り、自己に都合の良いものは正しいと言い、都合の悪いもの
は間違っていると捲(まく)し立てているとしか思えない誠に不思議な神経の持ち主である。
 そこでは、人を納得させる論理的立証は何一つ示されていない。ここには真実を模索する姿勢は微塵も見受けられない。

 情報化社会では、試刀道・真剣道の道場は直ぐにも見つかるし、足を運べば日本刀の実態を具に確認できる。
 何故真実を見極めようとしないのか? これをやらない理由は二つある。
 自ら「真実を模索するという資質が全く欠落している」か、「そんな事はどうでもよい」かのどちらかである。

 ここから導かれる結論は、この人物を何らかの特定思想の信奉者と理解すれば解り易い。
 このサイト主催者は特定の目的に基づき、「最初に結論ありき」である。
 そうであればこの不思議な思考に対する疑問も何となく氷解する。
 「特定目的の思想」と「事実の解明」はまったく無縁だからである。
 従って、このサイト主催者と議論すると云うことは何の意味も成さない。徒労に終わるだけである。
 いずれにしても、上記掲載の引用文は、なりふり構わぬ偏向者の「レベルと実態」を如実に証明する記念すべき内容と云う事がで
きる。
※1「実戦刀譚」刀柄の神秘性と「日本刀考」の古岡二刀斎師の「手の内」をご参照願います


再び、マスメディアに就いて


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