異説・たたら製鉄と日本刀 (3) 0 |
弥生〜古墳時代 |
滿城漢墓(劉勝) 前漢(B.C2世紀)
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@ 長さ: 42.4p 柄頭、鍔、剣身に獸形・花文金象嵌 A 長剣二口: この内一口は心部に軟鋼(炭素0.1-0.2%)、硬鋼(炭素0.5-0.6%)の 合わせと解説。下記朝鮮古斧から見て混合ではないか? 長さ不明 B 62.7p 鞘入り大刀 これ等の鋼材はいずれも塊錬鉄滲炭鋼、部分焼入が確認される。 剣・刀には青銅製や玉製の装飾が付き、鍍金・鍍銀、象嵌の装飾が付く。 高貴な被埋葬者の愛用品だったからであろうか。この時期の大刀は珍しい。 この他、青銅長剣、短剣、刃部 に鍍金された短刀(書刀)も埋葬されていた。 |
舶載刀剣で最も有名なのは、皇室三種の神器の草薙剣である。熱田神宮の御神体 となった。これは全く非公開で神職すら見る事が許されなかった。 ところが80年前、熱田神宮司社家4〜5人が禁を犯してこの御神体を覗き見た。 その時の印象を絵にしたものが左図である。 終戦直前、草薙剣は飛騨一ノ宮の水無神社に疎開された。 刀袋の上からの感触で長さ60.6p、重さから銅製と推定された。 |
前掲Aの金鑽(かなさな)神社古墳出土の直刀は鍛接時のスケール(加熱時に生成される金属表面 の酸化層)で鍛接面が容易に確認される。心金の平均炭素量は0.2%、刃先部で0.57%であった。 皮金にマルテンサイト組成がないので意識的な焼入は認められないが、パーライトの組成が 刃先に向かって微細になるので意識していない「軽度の焼き入れ」があったようだと分析さ れた。心金は朝鮮古斧と同じ方法で製作された鋼と推定された。 この他、含銅鉱石を製練した地金(炒鋼)と確認された古代刀は以下となっている。 ●長野県横和村出土の直刀(俵博士分析の55号刀) ●千葉県米倉古墳刀(A.D.7世紀) ●群馬県玉村角渕(俵博士分析の50号刀) ●群馬県二子塚の直刀 ●千葉県神崎古墳の刀 ●埼玉県稲荷山古墳の直刀 (これらの分析データは紙面の関係で割愛。一部は後述する) |
朝 鮮 古 斧 1.皮金は極めて薄く、平均炭素含有量は心金の0.2%に比して0.3%と大した差がない。軟鋼の部類である。 心金部と同一材を板状に鍛延して皮金が造られた。 高炭素の部分が小さく点状に散らばっている。 心金と同材を使って若干平均炭素量が高いのは薄板なので鍛造時に硬・軟鋼が良く練れたのか、或は赤 熱鍛延で吸炭したとも考えられる。心金と同程度の皮金の硬度は、皮金の意味を推論する参考になる。 2.心金は低炭素部(C※ 0.1〜0.2%のフェライト)の中に高炭素部(C 0.7〜0.8%のフェライトとパーライトの 混合組織)が島状に散在する。※ C = 炭素 これは数 p 塊の硬鋼と片状の軟鋼を混合し、加熱・鍛打を数回繰り返して鍛造成形したものである。 スケールから見て、混合の折返しは1〜2回程度のようだ。 混合には鉄塊や鉄鋌を使わずに小さな鉄片や鉄粒が使われている。 その理由は鍛冶で硬・軟の鋼材を混合し易かった為であろう。この硬・軟鋼の混合は重要な意味を持つ。 |
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