九四式軍刀 (2)0

九 四 式 御 賜 軍 刀 「靖 廣」

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九四式御賜軍刀「靖廣」

   御賜軍刀「靖廣」:  近代刀 (九段刀)、(刃長: 2尺1寸9分5厘 ・ 反り: 5分)、鉄鞘 ( 帯青茶褐色、光沢塗 )、
                透かし鐔、駐爪式、尉官刀緒付 ( 全長 95p )
    ※「おんし」は一般的に使っている「恩賜」ではなく「賜」である点に注意。天皇陛下からの下賜は「御賜」が正式呼称である

                                    


外装は制式規定通り。鍔は金色。鞘、金具、柄糸は茶褐色。丸紐猿手







靖国神社境内に発足して間もない「日本刀鍛錬会」の主任刀匠・宮口一貫齊靖廣の手になる腰反りの刀身





刀身切先と茎側半景




刀身切先・中央・ハバキ元部分






九四式制定後間もない初期の外装。鞘の塗色規定である「帯青茶褐色」は赤みが少く、深い黄緑がかった色調



    兜 金
 金具の色は「銅鍍金」、桜花葉は肉厚

 猿手  規定通りの丸紐

    




            ↑ 駐爪ボタン ボタン頂部は桜花模様の蝋付け

桜花の花弁模様: 他の金具が一般的な「変わり向こう山桜」に対して、縁金具の桜花模様のみ「向こう山桜」風になっている



切羽は二種四枚。裏に「1」の共通打刻



                  第一佩鐶俯瞰           着脱式第二佩鐶俯瞰

金具塗装の傷みから見て、本外装は第一佩鐶のみで常用されていたことが判る






      
  

 
   ヒンジ開閉式第二佩鐶
   佩鐶裏面は革張り





             責金                      石突         石突底部




           ハバキ上部             ハバキ側面           ハバキ底部


 
         
  

 

 宮口一貫齊靖廣

 二代目一貫齊宮口正房の嫡子。笠間繁繼に師事。
 昭和7年、閑院宮春仁王殿下の短刀ご鍛錬に際し相槌を務める。
 昭和8年、九段の日本刀鍛錬会主任刀匠。
 昭和11年、男爵・大倉喜七郎の大倉鍛錬場の主任刀匠。
 初銘・壽廣、國護同人。
 伊勢大神宮御神鉾、官幣大社春日神社御神鉾謹作。
 昭和15年、藤田中将より汪精衛への贈呈刀を鍛え、刀身に自ら
 破邪顕正の文字を刻す。
 備前傳、山城傳に優れ、彫刻も得意とした。
 昭和 31年 3月、60歳にて没す
 太刀銘: 靖廣謹作
 裏銘: 昭和九年五月吉日




拝受者: 川上清康 陸軍(砲兵)中佐

明治 43年2月6日、神奈川県生まれ
陸軍幼年学校 27期(御賜)
昭和 5年7月19日、陸軍士官学校42期卒 (御賜)
昭和 5年10月25日、陸軍少尉任官
陸軍砲工学校高等科第40期 (昭和9年11月26日卒・中尉) 御賜軍刀拝受 
昭和 14年12月、関東軍に配属
昭和 19年3月16日、正六位叙勲
昭和 19年5月、陸軍兵器行政本部総務部々員
昭和 19年10月、兵器長官部々員







 外箱上蓋四隅の菊花彫り
 
外箱に収められた桐箱は経時変化が少ない。拝領時から外箱に収められていたと思われる。
外箱が拝領附属品なのかは不明




上質な桐箱に収められた外装と刀身 (絹の刀袋に入った白鞘入り刀身)。中央手前は刀緒と桐の刀緒箱




 陸軍用箋に書かれた御賜軍刀・靖廣の説明
 文章から、刀の知識を有する者が拝受者・川上清康中尉(拝受時)
 に靖廣刀の所感を述べたものと思われる

 昭和九年五月吉日 靖廣謹作
 右御賜御軍刀は
 腰反り、ふんばり強く小切先にして姿備前傳と相見え
 中直刃締まりて匂足入りたる具合は相州貞宗の三哲の一人として
 知られたる 備前國畠田守家(もりいえ)系統二代元重写かと思料せら
 れる」

 「おんし」は一般的に使われている「恩賜」ではなく「御賜」である点
  に注意。「御賜」が正式呼称であったことが窺える





( 太田淳一氏所蔵 )



2013年10月24日より
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