海軍短剣 (3)0

御賜短剣「俊秀」  Royal gift dirk "Toshihide"

海軍短剣 8  | 軍刀 | 軍刀について | 太刀型軍刀


銘: 俊秀謹作、近代刀 (刃長: 七寸五分・内反) 木鞘(牛革巻黒漆塗)、金具:金色、
裏銘: 紀元二千六百年八月吉日

Mei: Toshihide-kinsaku、Modern-sword, (Blade length: 24.8p, Curvature: Opposite curvature),
Ura-mei: The lucky day in August, 1940
Wooden scabbard: Black Lacquered of a cowhide, Metal parts: Gilding,


















外装裏面。牛革の接合部も丁寧な仕上げ
Mounting(Koshirae) back. Finish also with a polite junction of cowhide








           鍛え疵
    


      御賜刻印の銀着せハバキ細部。上下の彫り模様に特徴がある
      御賜ハバキには金と銀の二種がある。時代に依る差と思われる

 Details of the blade collar(Habaki) of a royal gift stamp. An up-and-down
 engraving  pattern has the feature.

銘: 俊秀謹作 (堀井俊秀晩年の作、秀明同人)
裏銘: 紀元二千六百年八月吉日

Mei: Toshihide-kinsaku
Ura-mei: The lucky day in August, 1940
   
  堀井家三代目・俊秀

 俊秀(本名・兼吉)、明治19年(1886年)滋賀県下坂本村にて徳田広吉の三男として誕生。明治37年(1904年)、堀井家初代名匠・
胤吉が子・胤明の門人。明治39年(1906年)、胤明と共に桜井正次の鎌倉・瑞泉寺鍛刀所にて鍛刀。
 明治44年(1911年)胤明の養子となる。
 初銘・兼明。大正2年(1913年)、刀剣保存会より水心子正秀の秀の字をとって秀明の名を贈られる。
 大正7年(1918年)7月、日本製鋼室蘭工業所の招聘により同所に入社。北海道室蘭に渡り、室蘭工業所内に瑞泉鍛刀所開設。
 昭和8年(1933年)、誕生された皇太子(今上天皇)が「明仁親王」と命名された為に、これを憚って俊秀と改名。
 昭和14年(1939年)、後鳥羽上皇七百年祭奉納刀謹作。昭和17年(1942年)3月、宮内省より元帥刀十振を拝命、完成半ばにして翌18年 (1943年)に没す。
 満洲國建国十周年記念謝恩刀、三笠長・短剣の作者としても著名。大正・昭和前期を代表する名刀工。
 元帥刀や御賜軍刀・短剣の作刀を拝命することは刀匠にとって最高の栄誉であった。


拝受者: 海軍經理學校第三十期(昭和13年4月1日入学、昭和16年3月25日卒業) 足立純夫 (大正9年11月22日生)


軍經理學校卒業、修業生徒、學生、御下賜品拝受者名簿 (卒業者31名)

              卒業生徒    短劔一振 第三十期生徒  後藤 進
                        短劔一振 第三十期生徒  足立純夫
              卒業修業學生 銀時計   第二十九期甲種學生 海軍主計少佐 中村春男
                        短劔一振 第二十期選修學生  海軍主計兵曹長 瀬尾清一

在学者には「生徒」と現役将兵からの「選修學生」の二種がある。各種公学校では卒業式で成績優秀な二名に御(恩)賜品が天皇または代理の侍従武官や皇族から授与された。
陸大、海大は軍刀、海軍三校(海兵・機関・経理)は短剣、陸士、陸軍幼年学校・飛行学校、帝大は銀時計、陸軍砲工・騎兵学校は指揮刀が慣習だった。但し、時代に依って御賜品は異なる。
中村少佐は既に短剣を佩用している現役士官だった為に銀時計だったと思考する。


足立純夫様が拝受された往時のままの短剣と附属品

   (上): 内張りされた上質な桐箱に入った外装と白鞘入りの剣身(白い絹製の刀袋)。桐箱には一切文字は書かれていない
   (下): 分厚い高級和紙の目録(六つ折り)。文字は「短劍 一振り」のみ。「目録」の文字も無い
      その目録上の右が「海軍經理學校卒業、修業生徒、學生、御下賜品拝受者名簿」



 拝受者・足立純夫氏略歴
 戦後、警察予備隊入隊、保安隊、陸上自衛隊を経て昭和45年に防衛大学校教授。
 昭和58年3月、陸将補にて定年退官。平成三年勲三等瑞宝章受賞。

 昭和47年、通常兵器の法的規制に関する国際会議(ジュネーブ)、昭和58年、アジア地域国際人道法
 会議(キャンベラ)に出席。専攻は戦時国際法。
 著書: 「日本の安全保障入門」(土田國保防衛大学校長の本書の序文に、著者の恩賜短剣授与のこと
 が記されている)、
 「ジュネーブ条約解説四巻」、「武力紛争関係条約集」、「戦時国際法」、「現代戦争法規論」、
 他、軍事比較法制に関する論文多数。

 大変なご高齢ながら現在もご存命である。
 海軍短剣の意義を理解し、これを後世に語り継いでくれるに相応しい方に将来を託された。


(太田淳一氏所蔵)


20013年11月4日より(旧サイトから移転)
ページのトップへ

短剣(2)  短剣目次  軍刀  軍刀について     短剣 (4) →
Naval-Dirks(2)  Naval-Dirks table of contents  Table of contents  Naval-Dirks (4) →