上海事変での軍刀使用記録 | 軍刀 | 戦ふ日本刀 | 軍刀の実戦使用率 | 士官軍刀論 |
日本刀の近代的研究 小泉久雄海軍大佐は、昭和8年3月10日、「日本刀の近代的研究」と いう本を著した。 上海事変※の翌年に発行された著作である。 丸善鰍ェ発売、定価8円のハードカバー高額本であった。 ※ 昭和7年1月28日〜5月;上海での支那人による日本人僧侶 殺傷事件を発端とした日・支両軍の軍事衝突事件 左写真は、正装して長剣を握る小泉久雄海軍大佐 |
軍
刀 |
刄
味 |
刀
身 ノ 故 障 及 其 ノ 原 因 |
所
見 及 記 事 |
||||
銘 | 長 サ | 反 リ | 切
リ シ數 |
箇 所 | 切 レ 味 | ||
關 兼 定 |
尺
寸分 2-3-0 |
2.3
分 |
2 |
肩 1 |
突撃ノ瞬時二タ
太刀 ニテ袈裟掛ニ切ル、敵 綿入ヲ着用セシト片手 打ナリシ爲、完斬トハ 云ヒ難カリシモ間モ無 ク死ス |
(1)
物打邊ヨリ上方僅ニ 湾曲セル如シ (2)物打附近ニ長サ約一寸 ニ亘リ極メテ浅キ刃コボ レ (3)中央ヨリ少シク上方ニ 深キ刃コボレ一箇所 (4)中央棟ヨリ鎬地ニカ寸 寸敵ノ銃劍ニヨル切レ込 ミ疵一箇所 |
制式軍刀ノ柄ヲ、両手握リニ 足ル程度ニ普通ヨリ長クセリ 深きキ刃コボレハ、敵兵ノ装 具又ハ銃器等ノ金具ニ切リ付 ケタルモノナラン 首1卽死セシモ完刎ニ至ラズ |
首
1 |
卽
死セシモ完刎ニ至 ラズ |
||||||
關 兼 正 |
2-3-6 |
6分 | 2 | 首 |
極メ
テ良 |
ナシ |
夢
中ニテ明瞭ニハ記憶セザル モ手ゴタエ無ク良ク切レタリ 制式軍刀ノ柄ニテ稍々短ク感 ゼリ |
關
正 利 |
2-3-0 |
2.3分 |
8 |
頭
骸骨 1 |
抜
打ニテ卽死 |
横手下ニ大ナル刃コボレ 一箇所 物打ノ下方約三寸計リニ 亘リ刃コボレ數箇所 |
刃コボレハ頭ヲ
斬リシトキ 出來タルモノナラン 日本刀拵ノ儘ナリシ爲、活動 中ノ敵ナリシモ斬リタル後刀 身ニ曲リヲ生ゼズ 一尺八寸位ノ刀ガ使ヒ良シ |
首 3 | 1、
ハ完刎 2、ハ首ブラ下ガル |
||||||
肩 2 | 二タ太刀ニテ絶息 | ||||||
不明 2 | |||||||
關 兼 勝 |
2-1-0 |
7
分 |
2 |
左袈裟 1 | 右乳下迄達セリ | 袈
裟掛ハ頭ヨリ手ゴタエ 無シ |
此ノトキ中央ヨリ稍々
上部 ニ刃コボレ一箇所出來タリ 日本刀拵ノ儘使用ス、後中心 ヲ検ゼシニ鎺附近ニテ少シク 曲レルヲ發見セリ |
左
コメカミ ヨリ右斜ニ 頭 1 |
|||||||
和
泉 守 來 金 道 |
2-4-0 |
5
分 |
3 |
右袈裟 2 | 極メテ良好 | 袈裟切リノトキ少シク
刃コ ボレヲ生ゼルモ、其ノ後斬 味變ラズ、極メテ良好 |
日本刀拵ノ儘使用シ、
突撃 時ニテ手元多少狂ヒシ爲、二 人メノ袈裟切ニテ刃少シク曲ル |
首 1 | 一 刀ニテ見事ニ完刎 | ||||||
大
永裏銘 備前盛光 |
1-8-0 | 7.5 分 | 1 |
首 | 片
手ニテ首四分ノ三斬 ル、刃味至極良シ |
異 常ナシ | 日 本刀拵ノ儘 |
無
銘備前 平 折紙アリ |
2-1-8 | 4.9 分 | 1 |
首 | 切
レ味至極良好ニシテ 首約四尺飛ブ |
同 上 | 制 式軍刀拵 |
備 前長船 | 2-4-5 | 不 明 | 2 |
首 | 切レ味相當 | 同 上 | 日 本刀拵ノ儘 |
備前長船 祐 定 |
2-1-0 |
不明 |
7 |
左
肩ヨリ袈 裟 1 |
右乳ノ處迄 | 何等異常無シ
|
豫像以上ニ日本刀ノ切レ味良 キニ感心セリ 人体ニ骨アル如キ手ゴタエヲ 覚エズ |
腕 1 | 完切 | ||||||
右 足上部 1 | 斜ニ完切 | ||||||
首 3 | 見事ニ完刎 | ||||||
腰車 1 | 約三分ノ一切ル | ||||||
相
模守 國 綱 |
2-3-0 | 1 分 | 1 |
首 | 首
殆ンド切レ約五分厚 位残ル |
物
打ノ四、五寸下ヨリ約 一尺計リノ間ニ刃コボレ ヲ生ゼリ |
日 本刀拵ノ儘使用 |
綱 廣 | 2-4-0 | 5 分 | 7 |
首 | 何
レモ手ゴタエ無キ程 度ニ完刎 |
物
打附近ニ少シク刃コボ レ生ゼリ |
日
本刀拵ノ儘使用 切レ味豫像以上ナリ |
村 正 | 2-3-5 | 5 分 | 4 |
首
ヨリ肩ニ カケ 2 腹部刺突 2 |
切 レ味豫像以上 | 異 常ナシ | 制 式軍刀 |
河
内大掾 正 廣 |
2-4-5 | 5 分 | 1 |
後
頭部横 斜メ |
約
三分ノ一横ニ切込メ リ |
切
先ヨリ刀身ノ三分ノ一 及同三分ノ二ノ處ニ横ニ 折レ目ヲ生ジ使用不可能 トナレリ |
本刀身ハ表裏二
樋アル爲強味 足ラザリシ爲ナリ (寛文三年裏銘アリ) |
肥 前吉國 | 2-4-0 | 5.5 分 | 42 ※1 |
主
トシテ首 其ノ他各部 |
切 レ味至極 | 何
等異常無シト雖、骨ヲ 切リシトキノ痕カト思ワレ 刀身ノ物打ノ部ニ白ラケテ 見ユル部アリ |
數本ノ日本刀ニヨル切レ味ニ
比シ極メテ良好ナリ |
吉 宗 | 2-2-0 | 不 明 | 1 |
首 | 肉 一寸位残ル | 刀
身中程ヨリ上部約二寸 位ノ間刃コボレヲ生ズ |
新 刀元禄頃ノ物カ |
加 州清光 | 1-7-9 | 3.8 分 | 數 人 | 頭
部、首ヲ 斜メニ |
切 レ味極メテ良好 | 峰
ヨリ五寸位ノ處ニ刃コボ レヲ生ゼリ |
白
鞘ノ柄ニ糸ヲ巻キ使用ニ 便ス |
源
良近※ |
2-2-6 | 6.5 分 | 2 |
首 1 | 皮 一枚残リ頭前ニ落ツ | 抜
打チノ際、物打二箇所 フクラ一箇所、峰先端一 箇所刃コボレヲ生ズ |
制式軍刀ノ柄ニ木綿製
ヲ二重 ニ巻ク。刃コボレヲ生ゼシハ 咄嗟ノ場合切リ方不如意ニヨ ル |
首 前ヨリ抜打 | 半 分切レタリ | ||||||
無 銘 | 2-5-1 | 5
分 |
1 |
後頭部 | 約 三分ノ一切レタリ | 切
先ヨリ約五寸ノ間ニ無數 ノ刃コボレヲ生ゼリ |
日 本刀拵ノ儘 |
無 銘 | 1-9-0 |
不 明 | 7 |
首 3 外袈裟掛、 唐竹割等 |
切 レ味相當 | 峰
ヨリ四寸位ノ處深サ最大 一分最小二厘位ノ刃コボ レ數箇所ニ生ゼリ |
日
本刀拵ノ儘 充分直サゞレバ其儘ニテハ 實用覺束ナシ |
無 銘
|
2-3-0
|
6分
|
2
|
首 1 | 十 分ノ九切レ下ル | 中央部二三箇所刃コボ
レ ヲ生ズ |
日本刀拵ノ儘
|
同 1 | 完刎約三尺飛上ル | ||||||
新 村 田 刀 |
2-2-0 |
5分
|
1 |
首斜上方ヨ リ切下グ |
日本刀殊ニ前記清光ニ 比シ切味不良 ※2 |
峰下三寸位ヨリ刃ノ方ニ曲 リ、後直シテ鞘ニ収メタリ |
日本刀ニ比シ、刃味、丈夫サ 劣ルコト大ナリ |
2-3-0
|
不明
|
4 |
首 2 袈裟 1 唐竹 1 |
何レモ切味割合ニ良シ | 切先ヨリ六寸位ノ處ニ深 サ八厘位ノ刃コボレ、唐竹 割ノトキ峰ヨリ五、六寸ノ 處ニ刃コボレ及刃部ニマク レタル處四箇所ヲ生ゼリ |
||
2-2-5
|
4分
|
2 |
首 | 良好 | 峰ヨリ七寸位ノ處ニテ曲 リヲ生ゼリ 四人位迄ハ刃味變ラズ 鎺元曲ル ※3 |
鎺元曲レル爲護拳ガタガタト ナリ後端ハズレ使用上甚不便 ナリキ ※ |
|
2-1-0
|
5分
|
2 |
首 1 | 気味良ク切ル | 二箇所ニ多數ノ刃コボレ ヲ生ジ、頭蓋骨ヲ切リタ ルトキ刃ノ方ニ曲ガレリ |
曲リタル爲、鞘ニ納マラズ |
|
頭 蓋骨 1 | 相當ノ手ゴタエアリ |
← 軍刀について 戦ふ日本刀 ホーム | 実戦刀譚 → |