軍刀制定勅令(2) 大元帥佩刀0

天 皇 御 服 改 正・大 元 帥 佩 刀

Dress system & a Great-marshal sword revision for the Emperor

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皇 室 令 第 三 號



   新大元帥刀佩用の昭和天皇
 皇室令
 朕大正二年皇室令第九號天皇ノ御服ニ關スル件中改正ノ件ヲ裁可シ茲に之を公布セシム
 御名御璽

     昭和九年二月十四日             宮内大臣 湯浅 倉平
  
     
      皇室令第三號       官報 昭和九年二月十五日第二千百三十五号木曜日

統 帥 権 と 大 元 帥

帝国憲法(明治憲法)第11条「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」(軍令)
第12条「天皇ハ陸海軍ノ編成及常備兵額ヲ定ム」(軍政=政権)

 陸海軍を統(す)べる天皇は「大元帥」と称され、「統帥権」は天皇の大権として「政権」から独立していた。
 立憲君主制の天皇を補弼(ほひつ)するのは内閣の各国務大臣であるが、統帥部(陸軍参謀本部・海軍軍令部)の補弼の慣例は明文化されていなかった。

 明治時代、良識ある指導者がこの均衡を保っていたが、昭和に入りこの間隙を突いて統帥部(軍令)と内閣(軍政)の対立が生じ、統
帥部は天皇の神聖不可侵を盾にして軍政にまで権限の拡大を図るようになった。超法規的統帥権の拡大である。
 本来の統帥権独立とは、軍事作戦上で必要な緊急避難措置に対する免責規定である。
 憲法解釈上も議会・内閣は軍の横暴を制御出来たにも拘わらず、統帥部の拡大解釈を政争に利用した無定見な政治家の責任も大きかった。
 天皇の意志の如何に拘わらず、軍部は統帥権を拡大し乱用していった。
 明治憲法の基本理念は、立憲君主の天皇が内閣の意志に立脚する事であった。
 天皇の苦悩は「昭和天皇独白録」・「高松宮日記」に窺える。
 如何に為政者の見識と力量が重要であるかの教訓を残した。
 軍人勅諭「軍人ハ政治ニ関与スベカラズ」の大原則を軍が逸脱した処に昭和の病根があった。軍は自ら天皇を窮地に陥し入れた。
 明治憲法の陥穽というより、為政者と軍指導部の人災だったと言える。

 『“日本史的日本”を別国に変えた魔法の杖は統帥権にあった』と言う司馬遼太郎は、「昭和の軍」に就いて決して筆を執ろうと
はしなかった。                        美濃部達吉博士の「天皇機関説」に昭和天皇は賛意を表わされていた


大 元 帥 陛 下 御 佩 用 の 新 軍 刀


納入前に撮影された大元帥陛下の新軍刀

帝國陸軍に於ては、日支事變の實戦に、幾多の經驗を重ねたる結果、一般將校の佩用する從來の洋式サーベルに缺陷あるを發見し、日本古來の陣太刀式に改正することとなりたるが、畏くも、大元帥陛下に於かせられても、新制の陣太刀式御軍刀を御用ひ遊ばさるゝこととなり、三月十日陸軍記念日に際し、九段靖國神社境内の祝賀會場に臨御遊ばされたる當日より、愈々新御軍刀を御佩用あらせられた。
御刀身は日本鍛錬會にて謹作したるもので、その御外装は新橋壽屋事小松崎茂助氏の謹製に係り、御鎺は菊花御紋章の肉相彫刻、御目貫は菊花御紋章の三相、御刀緒は三分幅の絹手打ち紐、表は茶色、裏は古代紫、金絲交織、金モール總の御見事なるものである。
寫眞は卽ち、陛下御佩用の御軍刀である。(写真の説明原文)
(写真資料ご提供: K.Morita 氏)



  刀
 刀緒
 刀帶
 大正二年皇室令第九號中左ノ通改正ス
 別表陸軍式御服制式正装及禮装中刀、正緒及刀帶ノ項ヲ左ノ如ク改ム


 同制式通常禮装中刀、刀緒及刀帶ノ項ヲ左ノ如ク改ム


 鞘ハ鋼鐵製帶青茶褐色長サ約二尺五寸 柄ハ白鮫長サ約二握リトス 柄頭縁金鯉口及鐺ハ銅色櫻葉及櫻花ヲ附シ金色小縁トス 鳩
 目ハ金色二重裏菊座附 柄巻ハ茶褐色絹絲製平打紐ヲ巻キ 猿手ハ茶褐色絹絲製丸打紐 目貫ニ一對ノ金色三雙菊紋章ヲ附ス 鍔
 ハ金色表裏共四隅ニ櫻花各四箇ヲ附ス 佩環ハ銅色座金ハ櫻花ヲ附シ金腰ヲ施シ帶金ハ金色小縁上部ニ櫻葉及櫻蕾ヲ附シ金腰ヲ施
 ス責金ハ銅色金色小縁ヲ施シ金色柏葉ヲ附ス 但シ下部佩環ヲ除クコトアルヘシ 圖ノ如シ

刀緒
 幅約三分、長サ約散弱三寸ノ表茶色、裏紫色ニ金絲三條山形ノ交織平打絹絲紐ヲ折返シ其ノ端ニ茶、紫及金色絹絲紐ノ緒締及金線
 製ノ總ヲ附ス 圖ノ如シ

刀帶
 表ハ黒革裏ハ紅革又ハ緋絨、幅一寸トス 前章ノ金具ハ金色トシ徑一寸四分 周囲ニ櫻模様ヲ附シ中央ニ菊紋章ヲ附ス 釣革ハ二
 條トシ幅各七分、長サ一條ハ二尺、一條ハ一尺二寸トス 金具ハ總テ金色トス 但シ長釣革ヲ除クコトアルヘシ 圖ノ如シ
                                                               
 同制式軍装中刀及刀帶ノ項ヲ左ノ如ク改ム

    通常禮装ノ刀ニ同シ 但シ下部佩環ヲ除ク
刀 帶 通常禮装ノ刀帶ニ同シ 但シ長釣革ヲ除ク
(読み易い様に文の区切りを空けた)

・・・・・・・・海軍式御服省略・・・・・・・・

 同大元帥佩刀制式刀ノ項中「帶取」ヲ「佩環」ニ改ム
 陸軍式御服ノ圖中刀、正緒及刀帶ノ圖ヲ削リ、短袴ノ圖ノ前ニ刀帶ノ圖ヲ移シ其ノ前ニ左ノ二圖ヲ加フ


注釈
 皇室令第三號は大正二年皇室令第九號の天皇の御服に関する陸軍式御服と海軍式御服の一部改正である。

 @ 陸軍式御服制式正装及び禮装で「正緒」→「刀緒」に改正された。
 A 陸軍式御服制式通常禮装で「刀」が太刀型軍刀に、「刀緒」・「刀帶」も内容が改正された。太刀型軍刀とは何処にも書いて
   いないが、最後の備考に「陸軍式御服ノ圖中刀、正緒及刀緒の圖ヲ削リ短袴ノ圖ノ前ニ刀帶ノ圖ヲ移シ其ノ前ニ左ノ二圖ヲ加
   フ」とある。
  「通常禮装の刀の説明」と「左の二圖」(上の官報参照、次ページに拡大掲載)に依り、これが太刀型新軍刀である事が判る。
 B 陸軍式御服制式軍装での「刀」・「刀帶」は通常禮装と同じだが、「刀の下部佩環(着脱佩環)と刀帶の長釣革を除く」、即ち
   「制式軍装」では「一佩環」で佩くと改正された。
 C 海軍式御服制式正装で「長劔」及び「正剣帶」→が「刀」と「刀帶」に、制式禮装で「長劔」及び「剣帶」が→「刀」と「刀
   帶」に改正された。
   この備考で「夏期ニ在リテハ軍装第二種ヲ用イルコトアルヘシ但シ短劔を大元帥佩刀トシ靴ヲ黒革短靴トス」とあり、夏用軍
   装第二種着用の時は「短剣」を大元帥佩刀とすると規定した。
   制式通常禮装で「劔帶」の仕様が変更された。制式軍装の第一種・第二種劔帶の中の「禮装」を「通常禮装」に改正した。
   新軍刀の図中に「海軍式御服ノ圖中長劔、劔緒及正劔帶ノ圖ヲ削リ」とあるので海軍式御服にもこの新軍刀が適用された。

 この皇室令第三號で、大元帥佩刀は太刀型新軍刀と海軍短剣の二種となった。
 海軍式御服では、海軍士官新軍刀より3年早く大元帥佩刀が新軍刀に衣替えした事になる。
 大元帥佩刀は「刀」又は「短劔」・「刀緒」・「刀帶」又は「劔帶」が一体となった「服制」の一部である事が良く理解できる。
 本令は3月10日施行とされた。



 鞘の「帯青茶褐色」と金具の「銅色」は色見本や色の規格bェ無い(兵器・軍用機の一部には存在した)ので現存する軍刀から想像
する他はない。
 鍍金でいう「銅色」は十円玉を磨いた鮮やかな紫がかった桃色だが、この場合は銅の酸化皮膜の色を指していると思われる。
 将校用との違いは目貫の「三連菊花」、「ハバキの菊花紋」と「刀緒」にある。



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