元帥刀 (1)0

元 帥 刀

Marshal sword

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 帝国陸・海軍で勲功のあった陸・海軍大将は元帥府(天皇=大元帥を軍事上親捕する機関)に列せられ、「元帥」の称号が与えられた。元帥は階級ではなく、軍人最高の栄誉称号である。
 略式に「(人名) 陸 (海) 軍元帥」と称するが、正式には「元帥 (人名) 陸 (海) 軍大将」と呼称する。

 帝国陸・海軍70有余年の歴史の中で、17名の陸軍元帥と13名の海軍元帥が存在した。
 元帥府に列せられた陸 (海) 軍大将には「元帥刀」が下賜された。
 刀身は皇室御物の「小烏丸」を、外装は毛抜型太刀 (衛府の太刀) を模している。
 外装金具には菊花が全面に高彫りされ、鞘には菊花紋が鮮やかに蒔絵されている。

 The full general and admiral who had deeds of valor in the imperial army and the navy were registered into the marshal prefecture, and the title of the "marshal" was conferred. A marshal prefecture is an organization which assists the Emperor on military affairs. A marshal is not class but an honor title of the members-of-the-armed-forces highest.
 In 70 years of history of an imperial army and a navy, 17 Generals of the Army and 13 fleet admirals existed.
 The full general and admiral who were registered into the marshal prefecture were awarded the "marshal sword" from the Emperor.
 A blade imitates "Kogarasu-maru" of Imperial properties, and the mounting imitates the  Kenuki-gata Tachi.
 A scabbard attaches the lacquer work of the Imperial Household's chrysanthemum-crest skillfully


笠間繁継謹作、男爵・元帥武藤信義陸軍大将佩刀

(靖国神社収蔵)

Baron Nobuyoshi Mutō's General-of-the-Army sword

(Yasukuni Jinja collection)




刀身切っ先側は両刃の剣 (刃長: 二尺三寸五分)
The point-of-a-sword side of a blade is a double-edged sword.




太刀銘: 笠間繁継謹作  裏銘: 大正13年4月吉日
Tachi-mei: Kasama Toshitsugu Kinsaku, Ura-mei: The good day in April, 1924

笠間一貫斎繁継: 本名:笠間義一
明治19年4月静岡県生まれ、宮口繁寿、森岡正吉門人、日本刀鍛錬伝習所師範

Real name: Yoshikazu Kasama.
He was born to Shizuoka Prefecture in April, 1886.He is a pupil of the Shigetoshi Miyaguchi and Masayoshi Morioka.
He is an instructor of a Japanese Sword Forging Training School.
He is one person representing a present age sword of a swordsmith.




刀身には皇室の「十六八重表菊花紋」、樋には添え樋

A blade attaches the lacquer work of an Imperial-Household chrysanthemum-crest.
The fuller of a blade is double







元帥刀写真ご提供「靖国神社」様
Marshal sword photograph offer: Yasukuni Jinja

本掲載元帥刀写真は理由の如何を問わず転載や複写を禁じられております
For any reasons, this marshal sword photograph forbids reproduction and a copy.



元 帥 刀 制 定

 明治31年1月19日元帥府設置(詔勅)、同日元帥府条例公布。同年5月25日、元帥徽章制定。大正7年8月28日、勅令第三百三十號によ
り元帥府条例改正、同第三百三十一號により元帥佩刀を制定。翌29日、制式交付。

 制式要領: (大正7年8月30日、東京朝日新聞)
「刀長三尺一寸五分(内柄長さ五寸五分鞘長さ二尺六寸)、柄の兩面に各一個 鞘の兩面に各五個の金色菊花御紋章を鏤(ちりば)め縁頭(鳩目に銀の菊座を附す)、鍔(銀の小切羽を附す) 目貫、目釘(銀の菊座を附す) 
芝引 帶取(銀の褥(じょく)座二個を附す) 胴輪、鐺等總て金色にして刀緒は紫革(丸紐) 金具(金色) 地板は朧銀又劔帶は金線(幅三分)三條銀線(幅一分) 二條の一寸二分幅にして金銀線數條より成る長さ二尺一寸幅七寸五分及長さ一尺一寸の吊り革二本、劔帶前章は品質(黒革に金銀縞織線を縫着)金具金色にして中央に菊花御紋章を鏤めあり尚近日各元帥に御親授式を行はせらるる可しと」

 実際の親授式は一年後の大正8年10月20日、宮中表御座所にて執り行われた。(元帥刀勅令参照)
                              
                             「つか」の漢字は糸偏に候だがWEB上で文字化けする為に現代漢字を当てた


元 帥 刀 の 由 来

元帥刀ハ上古出征將帥ニ親授セラレタル節刀ノ式ニ倣ヒ元帥ノ稱號ヲ賜ハリタル陸海軍大將ニ對シ元帥徽章ト共ニ加授セラレ特ニ規定アル場合ニ佩用セシム

     ※ 節刀は任に赴くに際して天皇から親授され、任を終われば奉還するものであるが、元帥刀は元帥府に列せられた全員に元帥の証しとして
       授けられたもので、節刀と違い奉還の必要は無かった。
(参考引用: 森良雄著「元帥刀と軍刀」より)

 刀身は時代を代表する 森岡正吉、月山貞勝、笠間繁継、堀井俊秀 の四名(確認分)の刀匠に依って作刀された。
 元帥刀作刀を下命される事は刀匠にとって大変な栄誉であった。



   元帥・武藤信義陸軍大将
 Marshal Nobuyoshi Muto full general
             元帥徽章 Marshal badge

 佐賀藩出身。陸軍大学校を主席で卒業。昭和7年、関東軍司令官兼駐満全権大使兼
 関東州長官として満洲に赴任。 昭和8年5月3日元帥府に列せられ
 7月28日満洲にて没す(享年66歳 。 昭和8年8月6日男爵の爵位を賜る。

 He graduates from a Militery Staff College school with the top's results.
 In 1932, he started for his new assignment to Manchuria as the Kwantung Army
 commander, a residence Manchuria ambassador plenipotentiary, and the
 Guandong director general.
 He was registered into the marshal prefecture on May 3, 1933.
 And he died in Manchuria on July 28 (66 years old of age at death).
 On August 6, 1933, he gives me a baron's peerage.

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陸・海 軍 元 帥 と 元 帥 刀


 西郷隆盛(1872年7月-1873年5月)が最初の元帥とされるが、この元帥制度は一旦廃止された。
 明治31年(1898)、新たに元帥府条例が制定され、以来、終戦迄に以下の陸軍17名、海軍13名の元帥が存在した。
 但し、元帥刀に関しては「元帥佩刀制式」が大正7年8月26日に制定されたので、それ以前に没した元帥には元帥刀の下賜はない。

陸軍元帥一覧


   氏 名
  元 帥 拝 命 日
   歿(薨) 年
       元 帥 刀 と 所 在
1
 小松宮彰仁親王 明治31年(1898)1月20日 明治36年(1903)  -
2
 山縣有朋 明治31年(1898)1月20日 大正11年(1922)  元帥刀拝受
3
 大山 巌 明治31年(1898)1月20日 大正5年(1916)12月4日  -
4
 野津道貫 明治39年(1906)1月31日 明治41年(1908)10月18日  -
5
 奥 保鞏 明治44年(1911)10月24日 昭和5年(1930)7月17日  元帥刀拝受
6
 長谷川好道 大正3年(1914)1月6日 大正13年(1924)1月28日  元帥刀拝受
7
 伏見宮貞愛親王 大正3年(1914)1月9日 大正12年(1923)2月4日  元帥刀拝受
8
 川村景明 大正3年(1914)1月9日 大正15年1926)4月28日  元帥刀拝受
9
 寺内正毅 大正5年(1916)6月24日 大正8年(1919)11月7日 (大阪住月山貞勝謹作、大正八年一月吉日刃長:74.4p、
 反り: 1.6p
)拝受 陸上自衛隊山口駐屯地「防長尚武館」展示
10
 閑院宮載仁親王 大正8年(1919)12月12日 昭和20年(1945)5月20日  元帥刀拝受
11
 上原勇作 大正10年(1921)4月27日 昭和8年(1933)11月8日  元帥刀拝受
12
 久邇宮邦彦 昭和4年(1929)1月27日 (薨後追贈)  元帥刀拝受
13
 梨本宮守正 昭和7年(1932)8月8日 昭和26年(1951)1月1日  元帥刀拝受
14
 武藤信義 昭和8年(1933)5月3日 昭和8年(1933)7月27日 (笠間繁繼謹作・大正十三年四月吉日、二尺三寸五分)拝受
            靖国神社遊就館展示
15
 寺内寿一 昭和18年(1943)6月21日 昭和21年(1946)6月12日 (森岡正吉謹作・大正八年二月吉日、刃長: 74.5p、反り: 1.4p)
 拝受
     陸上自衛隊山口駐屯地「防長尚武館」展示
16
 杉山 元 昭和18年(1943)6月21日 昭和20年(1945)9月12日自決  元帥刀拝受
17
 畑 俊六 昭和19年(1944)6月2日 昭和21年(1946)6月12日 (俊秀謹作・昭和十八年八月吉日、二尺四寸五分) 拝受
過去、會津藩校日新館で展示されていたが、現在は所有者に返還


海軍元帥一覧


   氏 名
  元 帥 拝 命 日
   歿(薨) 年
         元 帥 刀 と 所 在
1
 西郷従道 明治31年(1898)1月20日 明治35年(1902)7月18日  -
2
 伊東祐亨 明治39年(1906)1月31日 大正3年(1914)1月16日  -
3
 井上良馨 明治44年(1911)10月31日 昭和4年(1929)3月22日 (月山貞勝) 拝受。 海上自衛隊・江田島教育参考館展示
4
 東郷平八郎 大正2年(1913)4月21日 昭和9年(1934)5月30日 (月山貞勝謹作・大正八年一月吉日、二尺二寸五分) 拝受
5
 有栖川宮威仁親王 大正2年(1913)7月7日  (薨後追贈)  -
6
 伊集院五郎 大正6年(1917)5月26日 大正10年(1921)1月13日  元帥刀拝受
7
 東伏見宮依仁親王 大正11年(1922)6月27日  (薨後追贈 )  元帥刀拝受
8
 島村速雄 大正12年(1923)1月8日  (歿後追贈) (大阪住月山貞勝謹作・大正九年二月吉日、二尺四寸五分) 拝受
  戦災にて外装消失。修復刀身のみ立花家「御花資料館」蔵
9
 加藤友三郎 大正12年(1923)8月24日 大正12年(1923)8月25日  元帥刀拝受
10
 伏見宮博恭王 昭和7年(1932)5月27日 昭和21年(1946)8月16日  元帥刀拝受
11
 山本五十六 昭和18年(1943)4月18日  (戦死後追贈)  元帥刀拝受
12
 永野修身 昭和18年(1943)6月21日 昭和22年(1947)1月5日  元帥刀拝受
13
 古賀峯一 昭和19年(1944)3月31日  (殉職後追贈)  元帥刀拝受


 以上、下賜された元帥刀は陸軍14口、海軍10口の合計24口であるが、戦災に依る消失もあり、20口が現存すると見做される。
 その内、開示された物 6口、公開不可の物 6口を含めて12口の確かな所在が確認されている (2010年11月現在、弊サイト文責)
 刃長は刀匠と時代に依って最大二寸の差異がある。又、一流金工師の手彫りに依る金具の菊花模様にも差異が認められる。

(本現存状況の無断転載、流用を禁じます)
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元帥刀目次 Marshal sword table of contents  


    元帥刀(2)刀身と柄周り細部   鞘周り細部   元帥刀制定   金具の母型(予定)

    Details of a Blade and a hilt   The details of a scabbard   Establishment of a marshal sword



2013年11月15日より(旧サイトから移転)
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