将校用軍刀の研究(4) 第三報の続き0

将 校 用 軍 刀 の 研 究 (4)

近 代造刀の検証 | 軍刀について | 日本刀の常識を問う | 軍刀身の研究 | 満鉄刀の全貌 | 軍刀論 | ホーム
ページ内検索  切味試験成績 | 落下試験成績 | 顕 微鏡写真 | 試製将校用軍刀仕様

第三報、4.經過及成績の続き


7.機械力鍛錬と人力鍛錬の比較

  1振完成迄の経過を比較すれば第5表の如し。


第5表 完成經過比較
                               臂力 = 人力
區  分 地   鉄 硬・軟組織組合 所用日数 松炭消費量 鍛錬回数
機械力鍛錬 
 純鉄機械卸し
 炭素量3.6〜4%
マクリ又は甲伏 3  64〜72s 15
臂力鍛錬
 玉鋼・包丁鉄又
  は純鉄手卸し
本三枚 4.5
112〜124s
8〜13
マクリ又は甲伏 4
94〜107s

         筆者注) 機械力鍛錬は、人力鍛錬に比べて、所要日数と松炭の使用量が約2/3と効率が上がる


第6表 紀 政 次 鍛 錬 經 過

番    號
1
2
3
4
5
6
鍛    錬
臂      力
機 械 力

地  鉄


刃 鋼 玉 鋼
(上中下)
玉鋼
(中竹)
水素還元鉄
手卸し
水素還元鉄
機会卸し
心 鉄 包丁鉄 同上 水素還元鉄にそ
の卸し鉄を混ず
機械卸し鉄に
電解鉄を混ず
鍛 錬 法 十    文    字    鍛
鍛錬回数
刃 鋼 9
9
8
9
15
11
心 鉄 1
1
5
5
15
15
鍛 錬 組 合
マ     ク     リ













3回
0.765% 0.867% 0.707% 0.750% 1.346% 0.864%
6回 0.662% 0.637% 0.703% 0.051% 1.116%
9回 0.515% 0.619%
0.550% 1.080% 0.770%
12回







0.910%
15回 0.500%
焼入前 0.025% 0.511% 0.430% 0.530% 0.683% 0.770%
心鉄
組合前 0.050% 0.050% 0.200% 0.200% 0.180% 0.180%
備考
焼入前の分析は鉋鋤の削り屑とす マクリの皮鋼と刃鋼は同一とす


第7表 小 山 信 光 鍛 錬 經 過

番     號
1
2
3
4
5
6
鍛     錬
臂       力
機 械 力

地  鉄


刃 鋼 玉鋼(上中下)に
電解鉄を混ず
電解鉄手卸し
電解鉄機会卸し
心 鉄 包丁鉄に電解鉄
を混ず
電解鉄
電解鉄
鍛  錬  法 捩り鉄と一文字鍛 一  文  字  鍛
鍛錬回数
刃 鋼 13
13
12
13
15
15
心 鉄 6
6
6
6
6
6
鍛 錬 組 合
甲        伏













3 回
0.792% 0.830% 0.890% 0.870% 1.400% 1.400%
6 回 0.750% 0.810% 0.800% 0.800% 1.280% 1.280%
9回 0.790% 0.700% 0.860% 0.740% 1.090% 1.090%
12回 0.720% 0.720% 0.720% 0.680% 1.090% 1.090%
15回



1.100% 1.100%
焼入前 0.713% 0.720% 0.750% 0.530% 0.890% 0.890%
心鉄
組合前 0.134% 0.134% 0.030% 0.030% 0.030% 0.030%
備考
焼入前の分析は鉋鋤の削り屑とす 5號と6號の地鉄は同時鍛錬とせるものなり


第8表 守 次 則 定 鍛 錬 經 過

番    號 1
2
鍛    錬 臂    力

地  鉄

皮鋼・刃鋼  玉鋼 (上、竹)
 心 鉄  包丁鉄と玉鋼
鍛  錬  法 十 文 字 鍛

鍛錬回数


皮 鉄 12
9
刃 鋼
6
心 鉄 1
3
鍛 錬 組 合 マクリ
本三枚















3回 0.438% 0.369%
6回 0.445% 0.462%
9回 0.415% 0.360%
12回 0.526%
 焼入前 0.511%
刃鋼

3回
0.570%
6回
0.520%
 焼入前
0.511%
心鉄  組合前 0.050% 0.050%
備考
 焼入前の分析は鉋鋤の削り屑とす   

 各刀匠は機械力鍛錬は今回を以て嚆矢( こうし=物事の初め)とするが故に空気
 槌及送風機には不慣にして、加ふるに白銑の部分を混ずる等玉鋼鍛錬とは大
 いに趣を異にするにも拘らず上記の成績を得たるは機械力鍛錬の能率良好な
 ることを示すものなり。

 本研究試験に於ては玉鋼、包丁鉄の機械鍛錬は実施しあらざるも本試験の結
 果より考ふれば可能なるものと信ぜられ、上記の表より更に能率増進するも
 のと思考す。



 筆者注
 最良切味の小山信光の玉鋼刀は唯一刃鋼に包丁鉄を混入しているが最も炭素
 含有量が高い。
 落下試験では最も脆弱な刀となった。
 能く切れる刀が強靱な刀とは言えない例である。

 小山信光、守次則定の二人は、昭和16年新作日本刀展覧会に於て、最高位の
 「鍛刀總匠」を受賞した刀匠である。
 ところが、この二人が造った刀は、次ページの墜撃試験で最も脆弱な刀だっ
 た。
 展覧会の評価は当然に外観(地肌や刃文) である。
 外観と性能は全く無関係と言える。
 従来の外観に依る刀の性能評価が如何に無意味であるかを示している。
 性能の良い刀は概ね外観も良いとする小倉造兵廠の所見には大きな矛盾があ
 る。
 成瀬関次氏の「少し眠い感じの地肌・刃文の刀が良い」との指摘は論理的に
 も当を得ている。
 研究者の美術刀への思いが間違った見解となって随所に現れている。
 極めて残念な点である。


8.鍛錬経過

  第6、7、8表に三刀匠の鍛錬経過を示す。第9、10、11表に刀の各部寸法を示す。(省略)

9.鍛錬組織

  第25図は玉鋼を3回折返し鍛錬したる後採取したるものにしてAは加熱によりて表面が脱炭しフェライトの混じたる組織なり。
  折返し鍛錬を施す時は脱炭せる部分が鋼の内部に入りフェライトの層を生ず。
  数回折返し鍛錬を繰り返せばフェライトの層は多数となり、ベニア板に類似の構造となる。
  斯くして炭素量は次第に低下し介在物除去され強靱を得るに至る。試料を顕微鏡にて横断すればフェライトとパーライトの層を
  認むることを得。
  Bはフェライトとパーライトが層状をなして存在する一部の組織なり。CはB部の如くフェライト多からざる内面部を示す。
  この部分も又折返し鍛錬によりて炭素量が低下し、パーライト中に少量のフェライトを見ることを得。
  第26図は水素還元鉄手卸しを9回鍛錬したるものの組織なり。
  斯くの如く日本刀の組織は複雑にして局部的に炭素含有量に差異あることを以て特徴とす。
  鍛錬によりてベニア板類似の構造となるのみならず硬軟組織の組合せによりて刀全体が細かくベニア板の構造を有するが故に日
  本刀は容易に折損せざるものなり。斯くの如き精巧なる組合せ組織を溶解精錬の洋鋼に求むるは到底不可能※のことなり。

   ※ この分析者の見解は大きな間違い。水素還元鉄も洋鋼であり、練り材や粘硬元素を添加した合金鋼は「ベニア板構造」である必要は全く無い
     然も「容易に折損せざるベニア板類似構造」の日本刀は墜撃試験で最も脆弱だった。日本刀神話に支配されてこの矛盾に気がついていない
   注意: 本研究には5人の技術者が携わり、各人の意識と認識が異なって評価・所見にかなりの相違がある
     結果、互いに矛盾する記述が随所に存在する。本報告は全編、こうした内情を勘案して注意して読む必要がある
     在来の日本刀の固定観念を引きずっている為である



第25図玉鋼
   (3回折返し鍛錬) →
   白; フェライト
   黒: パーライト

第26図水素還元鉄手卸し
   (3回折返し鍛錬) →
   白; フェライト
   黒: パーライト
 
1

10.切味試験の成績

   第8図の切味試験機を以て切味試験を実施す。その成績を第12表及第27図に示す。


第12表 切 れ 味 ( 上 昂 角 度 )

材  料 鍛錬区分
第1回
第2回 第3回 平 均


紀 政次
玉  鋼
臂  力 76.5 77.0 81.5 78.3
水素還元鉄 同 上 72.0 68.5 73.0 71.3
同 上 機 械 打 80.0 74.0 80.0 78.0

小山 信光

玉  鋼 臂  力 84.5 76.5 81.5
80.9
電 解 鉄 同 上 73.5 74.5 74.5 74.2
同 上 機 械 打 73.5 70.0 76.0 73.0
守次 則定 玉  鋼 臂  力 80.5 74.5 76.5 77.2




 本成績を曲線にて示せば第27図となる。第12表及第27図によれば玉鋼を材料とするものが切味最良なることを知れり。

 次に巻藁試切を行ひたるに15〜20p切ることを得たり。
 尚、厚さ2o、幅1pの極軟鋼板は皆刃こぼれなく切断し得たり。

 注: 水素還元鉄及び電解鉄は人力と機械力の両方で作刀された。三人の刀匠はこれらの鋼材を初めて使用した。
   小山信光の例では玉鋼が最良の切味との小倉工廠の見解が成り立つが、紀政次の水素還元鉄機械鍛錬刀は同刀匠の玉鋼刀とほ
   ぼ同等の切味を示していて、守次則定の玉鋼刀より成績が良い。小山信光の電解鉄刀が悪い。
   鋼材に依るものではなく、不慣れな為であろう。その理由を解明すべきだった。
   小倉造兵廠はそうした条件の違いを全く斟酌していない。
   玉鋼の使用を前提としているので、他の鋼材は当て馬的にしか捉えていない嫌いがある。

 各種試験結果に対する諸評にも、玉鋼の優位性を導こうとするかなり偏った解釈が目立つ。
 先入観の無い研究者なら、もっと違う見解を出していただろうとそれが惜しまれる。又、刀にとって最も重要な点は折れ難く、曲
がり難い事である。
 切味は二の次、三の次ぎの問題であってどんな刀でも人を斬るのに支障は無い。
 刀と言えば直ぐに「切味」を問題とするのはあまり当を得た刀の見方ではない。
 然し、どの鋼を使ってみても、刀匠間の力量の差、同一刀匠でも一刀毎に性能のバラツキが出る事は避けられなかった。
2

11.落下試験成績

  第10図の落下試験機を以て第28図に示す刃打、平打、棟打を実施す。刃打、棟打に於ては刀が甚しく損傷又は折損する迄行ひ、
  平打に於ては60°又はそれ以上に湾曲する迄行ひたり。
  第13〜19表は落下高と屈撓(くっとう)の測定値にして第29〜36図はこれを曲線にて表はせるものなり。                                        筆者注:第13〜19表及び第29〜36図は総合結果のグラフを表示する為に割愛する
  墜撃を受くれば刀の支点に当たる處は凹むを以て刀身を反対の位置に置きて屈撓を測定す。
  落下高大なる場合にはこの撓みは屈撓に比して無視し得る。



筆者注:刀身p燒セ例 6/1=第6表 (紀正次) の1号刀を示す。7/2=第7表 (小山信光) 2号刀、8/2=第8表 (守次則定) 2号刀・・・・

     紀正次  6/1=玉鋼・人力鍛錬、6/4=水素還元鉄・人力鍛錬、6/6=水素還元鉄・機械鍛錬
     小山信光 7/2=玉鋼(心鉄に電解鉄混入)・人力鍛錬、7/4=電解鉄・人力鍛錬、7/6=電解鉄・機械鍛錬、
     守次則定 8/2=玉鋼・人力鍛錬、

  平打成績  最優秀=6/6 (水素還元鉄・機械鍛錬)、脆弱=8/2 (玉鋼・人力鍛錬)、最脆弱=7/4 (電解鉄・人力鍛錬=グラフ無し)
  刃打成績  最優秀=6/4 (水素還元鉄・人力鍛錬)、最脆弱=7/2 (玉鋼・心鉄に電解鉄混入・人力鍛錬)
  棟打成績  最優秀=6/6 (水素還元鉄・機械鍛錬)、最脆弱=7/2 (玉鋼・心鉄に電解鉄混入・人力鍛錬)

  切味試験では玉鋼刀の一部が好成績を出しているが、刀の強靱性では水素還元鉄刀が圧倒的な強さを示している。




  落下高15p以下に於ては刃打、棟打の屈撓小なるを以て15pより開始せり。第36図は試験結果を総括せるものなり。第37図は落
  下試験によりて破損したる刀の写真にして、最初、切先に近き部分に於て刃打を行ひ、その下部に於て順次平打、棟打を実施せ
  り。

12.落下試験成績の考察

  落下高を横座標にとり、屈撓を縦座標にとりて両者の関係を求むれば、刃切れ、フクレ及屈撓少くして高き落下高に耐ゆるもの
  が実用上好都合なり。
  即ち、第34図に示す如くBはAより実用上好都合なる刀にして一般に曲線は横座標軸に接近し、而も長く続く程実用上好都合な
  り。
  第36図を観るに、刃打及棟打に対しては屈撓量少く、特に棟打に対しては脆弱にして折損し易し。
  刃打に対しては刃切れ又はフクレを生ずるも棟打に比すれば折損し難く、平打に対しては数個の刃切れを生ずれども屈撓量大に
  して折損せざることを知る。
  これにより、日本刀は刃打に対して最も強靱にして、棟打に対して最も折損し易きことを知る。
  而して、実用上より見て、以上三種の落下抗力を兼備すること望ましきは論を俟たざるところなり。

  第16表 (7/2號刀) は刃打35pにて折損、棟打25pにて大なる刃切れを生じたり。平打に於ては64゜30' に湾曲するも折損せ
  ず。
  第17表 (7/4號刀) は刃打45pにて支点に大なる刃切れを生じ、平打は15pにて折損せり (注:従ってグラフ無し) 。本刀は刃打
  に対する屈撓最小なれども上記の2刀は強靱性に乏しきものと思考す。

  一般的に見て、刃打、平打、棟打に対して屈撓の最大なるは第19表 (8/2號刀) にして最小なるは第15表 (6/6號刀) なり。
  第13表 (6/1號刀) 及第14表 (6/4號刀) は中間の成績を示せり。
  第15表 (6/6號刀) の棟打にては焼刃脆きため刃こぼれ次第に大となり、棟に対する墜撃が緩衝される感あり。
  これがため、折損せしむること能わず、75p以上にて曲線の傾斜が緩やかとなりたるはこれがためなり。

  第15表 (6/6號刀) 及第18表 (7/6號刀) は純鉄機械卸し機械打なるも、切味試験及落下試験に於て可成りの良成績を示せるは機
  械力の応用可能性あることを物語るものにして、本結果より玉鋼機械打も十分有望なりと思考す。
3

 図面の顕微鏡写真に就いて

  第39〜43図は打損せる刀の断面の顕微鏡写真にして、Aは焼刃、Bは焼刃境、Cは皮鋼、Dは皮鋼と心鉄鍛接部、Eは心鉄、Fは刃鋼
  と心鉄鍛着部なり。焼入温度及皮鋼、刃鋼、心鉄の鍛着状況良好にして組織中に残留する介在物少し。
  第41図は落下試験に於て屈撓最小なりしを、第48図は最大なりしものを示す。これを第6表 (紀正次) 及第8表 (守次則定) 分析
  結果と照合して考ふるに刃鋼、皮鋼及心鉄共に炭素含有量は後者に於て少く、第13表 (6/1號刀)及第14表 (6/4號刀) の炭素含
  有量は概ね前記の中間に位するを以て、屈撓と炭素含有量とは密接なる関係あることを知る。
  第40図は第41図及第43図の心鉄は包丁鉄又は純鉄と玉鋼又は卸し鉄を積み重ねて鍛錬せるものなるが故に、粒微少にして鍛錬効
  果十分に現れ、両者が層状をなしてベニア板の如き構造を有す。
  刃鋼、皮鋼及心鉄の鉄の各々がベニア板の構造を有するのみならず、硬軟組織の組合せにより刀全体も亦(また)ベニア板の構造を
  有するが故に日本刀は容易に折損せざるなり
  心鉄は偏在せしむることなく対象に、而も棟より焼刃附近迄入れること肝要なり。
  亦、炭素含有量低き刀は屈撓し易きを以て、鍛錬によりて脱炭を少からしむる如く工夫研究を望むものなり。
                    ※ 折返し鍛錬の層の多さと強度は無関係。技術者らしからぬ間違った解釈である。折返し鍛錬と強度参照

A,B,C,D,Eは顕微鏡撮影位置。白: フェライト  黒: パーライト  X300

第39圖 第1表1號刀 刀工D




第40圖 第6表4號刀 紀 政次




第41圖第6表6號刀 紀 政次




第42圖 第7表6號刀 小山信光




第43圖 第8表2號刀 守次則定



4

5.将 来 に 対 す る 意 見

 
 従来、軍刀刀身の選定に当たりては鑑識家が刀姿及刃文字(ママ)肌等を主として外部に現れたる美観によりて適否を判定しありし
 も、斯くの如き方法にて果たして本質的構造、特に実用的性能を如何なる程度に判定し得るものなりや否やに就いては若干の疑惑
 の念を覚ゆると共に科学的、合理的検査方法確立の必要を痛感する次第なり。
 又、判決5.にも記せる如く、従来の作業には因習に捉(とら)はれ多くの無駄をなしあるものあり。
 依って将来に対しては次の点に関し研究を続行するを要するものと認む。

   1.各種材料に依る機械卸し方法を慎重に研究し、多量優良廉価の目標に直進すること。
   2.為し得れば、下士官兵用のものにも日本刀を拡充すること。

    附録                 試製将校用軍刀の購買仕様書

 第1條 本品は第44図竝に次ぎの各号により太刀を製作し上研を施し白鞘に収容し納入するものとす。

  1.全体的外観は寸法、形状に均衡あり上品にして強き形姿を有し切味良好にして特に平打及棟打に対して強靱なる性質を有し
    容易に折損せざるものなるを要す。
  2.恰好は鎬造りにして華表(かひょう)反りとす。
  3.地鉄は当廠より交付する玉鋼、包丁鉄及純鉄を使用し第20表の製造区分によりて製作す。松炭その他は自弁とし、純鉄に対
    しては卸し鉄法を施して刃鋼、皮鋼として別に同一純鉄より心鉄を製造す。
    制作者の最得意とする鍛錬方法及硬軟組織の組合せを行ふものとす。
    刃鋼の炭素含有量は0.5〜0.7%の範囲とす。心鉄は包丁鉄又は純鉄に炭素を吸炭せしめたるものにして数回の鍛錬を施し介
    在物少く炭素含有量は0.05〜0.25%の範囲とす。



第20表

刀 匠 名 地 鉄 品質 員数 摘     要

紀  政次
玉鋼、包丁鉄
2 東京九段日本刀鍛錬会 及 廣島市帝國製鐵株式会社製
東京芝浦電気株式会社製 2本は手卸し、2本は機械卸し
水素還元鉄 純鉄 4

小山 信光
玉鋼、包丁鉄
2
秋田市秋田製鋼所製
2本は手卸し、2本は機械卸し
水素還元鉄 純鉄 2
守次 則定 玉鋼、包丁鉄
2



  4.刃文は随意とするも刃文の深さは中程度とし刃縁匂深く小沸絡むものとす。
  5.中心の形状鑢仕上及刻銘は特に入念に行ひ、銘は太刀銘とし、佩表の上部に小倉造兵廠の符号を附し、その下に刀匠名を刻
    し佩裏には製作年月日を干支(えと)にて刻するものとす。
  6.刀身の肉置は鎬地平地及刃は適度なる円味を有する蛤刃にして凹凸なく地研ぎし筋及角は一の直線又は曲線にして表裏対象
    の形状を有し、砥石跡及シケなく拭ひて地肌よく現れ焼刃に沿ひて刃を拾いたるものとす。
    鎬地及棟には磨棒を用ひ、ハバキ附近は附刃せず、刃区棟区には踏張りを与へ、小鎬と松葉角の交点の重より若干厚く研磨
    す。
  7.長、反、身幅、重の切先の長さその他各部の寸法は図示の通りとす。
  8.重量は210匁(もんめ)以下とする。
  9.完成品の寸法、形状は第44図と僅少の相違は許容し得べきも、重量の超過は許容せざるものとす。
  10.検査は現品持込みの際、当廠所定の方法によりて行ふ。


  ※購買仕様書の刀身図面は各部寸法を実に細かく規定している。後の陸軍受命刀匠規格刀の実質開始と見ることが出来る。



(第3報完)



   2013年9月28日より 無料カウンター 直接ご訪問(経由を含まず)
ページのトップへ▲

 第三報  第一報  ホーム  軍刀 第四報