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區分 | 刀工 | 材料 | 鍛錬 | 地肌 | 刃文 | 鋩子の 返 り |
身幅 (o) |
長さ (o) |
重ね (o) |
重量 (gr) |
鍛 伸 刀 |
A |
安 来 白紙3號 |
鍛伸 | 無地 | 五の目尖 矢筈交り 匂出来 |
大 丸 匂出来 |
28.8 (95厘) |
675 (232分) |
6 (2分) |
855 (228匁) |
B |
刀劍鋼 | 鍛伸 | 無地 | 三本杉 匂出来 |
小 丸 匂出来 |
33.2 (110厘) |
670 (221分) |
6 (2分) |
1028 (274匁) |
|
C |
〃 | 鍛伸 | 無地 | 中直刃 匂小沸 |
小 丸 匂小沸 |
28.8 (95厘) |
667 (220分) |
6 (2分) |
875 (239匁) |
|
本 鍛 刀 |
D |
玉 鋼 | 四方詰 | 地板目 鎬柾目 |
三本杉 匂出来 |
中 丸 匂出来 |
33.2 (110厘) |
682 (225分) |
6.7 (2.3分) |
1012 (270匁) |
E |
〃 | 〃 | 〃 | 五の目乱 沸稍々荒 |
自 蔵 匂小沸 |
30.3 (100厘) |
652 (215分) |
7.9 (2.6分) |
950 (253匁) |
|
F |
〃 | マクリ | 板柾 交じり |
中直刃 匂小沸 |
中 丸 匂小沸 |
33.2 (110厘) |
673 (222分) |
6 (2部) |
875 (233匁) |
|
C |
〃 | 四方詰 | 柾目 | 中直刃 匂小沸 |
中 丸 匂小沸 |
31.8 (105厘) |
670 (221分) |
6 (2部) |
882 (235匁) |
|
G |
〃 | 〃 | 〃 | 小乱れ 匂沸叢 |
乱れ込 沸稍々荒 |
33.2 (110厘) |
682 (225分) |
7 (2.3分) |
930 (245匁) |
A.試験方法 本試験に於ては次の3種の試験を実施せり。 イ.軟物に対する試験 ロ.中硬物に対する試験 ハ.堅硬物に対する試験 試験実施に当りては試料は第2図に示す如き試斬り台に載せ、刀には試斬柄を嵌(は)め大上段 に振り冠(かむ)り全擘力(はくりょく)を集中し、物打ちにて試料に直角に斬切せり。 斬切の際には引き又は押しの技巧は弄(ろう)せず。 B.試験成績 イ.軟物に対する試験は第3図(A)に示す鹿毛の布団を試料とせり。試斬り台上に試料5枚を 重ね斬切したるに何れも3〜4枚を切断し得たり。 刀の地及刃に対しては些少の変化をも認めず。 ロ.中硬物に対する試験は第3図(B)に示す青竹入り巻藁を試料とせり。藁を水に浸し径約 3pの青竹を中に囲み藁を外周に置き縄にて縛り径約12pの巻藁とし、台上に載せて 斬切したるに何れも8〜9割を斬切することを得。刀の地及刃には些少の変化をも認め 得ず。 ハ.堅硬物に対する試験は第3図(C)に示す極軟鋼線(5oφ)及極軟鋼板(3o厚)を試料とせ り。本鍛刀にありては軟鋼線を切断し得たる場合は第4図(A)の如き削れ欠けを呈し、 切断し得ざる場合、試料は湾曲し、焼刃深さの約1/4程度の第4図(B)の如きソゲ欠又 は小欠を呈したるも、鍛伸刀は切断し得たるものなく焼刃深さの約1/2〜1/3程度の 大欠を呈したり。 極軟鋼板に対しては試料に刃部斬撃の痕跡及湾曲を認むるのみにして切断し得たる刀な し。 本試験に於て、本鍛刀は比較的長き(長さ約1〜1.5p)小欠(深さ約1o)を呈し、鍛伸刀 は比較的長き(長さ約1〜1.5p)大欠(深さ約2.5o)を呈したり。 第二表は試験結果を示す。 |
區 分 |
刀 工 |
材料 |
軟物 試験 |
硬物 試験 |
堅 硬 物 試 験 |
摘 要 |
|||
軟 鋼 線 | 軟 鋼 板 |
||||||||
切 味 | 損 傷 | 切 味 | 損 傷 | ||||||
鍛 伸 刀 |
A | 安来鋼 |
可 | 可 | 1/3斬込 | 大 欠 | 不 可 | 大 欠 | 白紙3號 |
B |
刀劍鋼 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | ||
C |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | ||
本 鍛 刀 |
D |
玉 鋼 | 〃 | 〃 | 切 斷 | 削れ欠 | 〃 | 〃 | |
E |
〃 | 〃 | 〃 | 1/2斬込 | 小 欠 | 〃 | 〃 | 軟鋼線湾曲105 | |
F |
〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 〃 | 軟鋼線湾曲105° | |
C |
〃 | 〃 | 〃 | 切 斷 | ソゲ欠 | 〃 | 〃 | ||
G |
〃 | 〃 | 〃 | 1/2斬込 | 小 欠 | 〃 | 〃 | 軟鋼線湾曲140° |
C.刃コボレに就いて 本鍛刀の刃鉄は8〜10回の折返し鍛錬を施したるものなるを以て数百枚(鍛錬回数8の場合は2の8乗=256 枚、10回の場合は2の10乗=1,024枚)の薄き刃鉄が鍛接されたる構造を有す。 故に堅硬物試験に際し、刃が試料に対して直角に斬込みたる場合、刃部の両側は斬撃の衝撃荷重を等分に負担 することとなり、刃鉄と試料との間の抵抗に依り剪断(せんだん)作用を惹起(じゃっき)し、表面の薄き刃鉄は剥落(はく らく)するに至る。 故に刃鉄が削れ欠を生じたる場合は斬撃が最も正確に行われたる場合にして、試料に対して稍々(やや)傾斜ある 場合には一側に於て大部分の加重を負担し、ソゲ欠を生じる。 小欠を生じたる場合は傾斜大なるか又は刃鉄に欠点ある場合なり。 鍛伸刀は材料を鍛伸し刀の形状に成形し刃部に焼入したるものなるを以て、刃部が衝撃荷重に脆弱なることは 論を俟(ま)たざる處なり。 故に、正確に斬撃を為すも堅硬物に対しては大欠を生ずるは怪訝(けげん= 疑い)の余地なき處なり。 D.試験成績の考察 軟物及中硬物試験に於ては鍛伸刀及び本鍛刀の間に特記すべき優劣を認むるを得ず。 軟物及中硬物試験にて見事なる切味を現すには第5図(B)に示す如く地及刃肉を平に研磨することに依りて 楔(くさび)の原理に依り容易に目的を達することを得。 然れども、斯くの如き肉置に於ては堅硬なる品物の斬撃に於て必ず刃の大欠 を来すものなり。 |
|
故に第5図(A)に示す如く刃に肉を有せしめ所謂(いわゆる)蛤(はまぐり)刃の肉置とするを要す。 然れども、この2種の肉置は相互に相反する性質を有するを以て、両者の中間に位する適当なる肉取りを採用すること肝要な り。古の名工の鍛錬せる名刀と雖(いえど)も、堅硬なる試料を無瑕疵(か し)にて切断するは、斬手の熟練せる技量及精神の集中統一 が融合したる所謂一心不乱の心境に於て初めて能(よ)く為し得る處にして、素人にては各刀に対し同一なる条件の下に斬撃し公 平なる成果を期待し得るものにあらず。 故に堅硬物試験結果に依りて切味の序列を附するは正鵠(せいこく)を失する虞(おそれ)なしとせざるも、本鍛刀と鍛伸刀とは試験に依 りて生ずる損傷の状況に異なる傾向を認むることを得たり。 |
A.試験方法 第6図に示す落下試験機上に刀を載せ重量12sの重錘(じゅうすい)を落下せしむ。 平打ち試験にありては物打の稍々上方に落下高285oより開始し、50o宛揄チし、刀が切断する か又は湾曲して試験不可能に至るまで落下せしむ。平打試験終了後棟打試験を実施す。 棟打試験にありては物打附近の棟に落下高60oより開始し、50o宛揄チし、刀が切断するか又は 切断せざるも大なる刃切れを生ずるに至る迄落下せしむ。 上述の如く重錘を落下せしめ破壊せる場合の落下高を求め、この数値に依り落下に対する強さを 比較せり。 刀の各部寸法には多少の差異あるも購買明細書に示す寸法に依りて製作せるものなるを以て切断 面の大きさは同一と見做(みな)し得。(次ページへ続く) |
枕間163o、 枕の高さ52o |
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