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裏銘: 昭和九年二月日 範士中山搏道先生試切刀 注) 成瀬関次氏は、源良近刀は無垢鍛えが多いと証言している。但し、本刀の造り込みと使用鋼材 は不明である。日本刀の究極の目的は実戦性能の実現にある。 研ぎ直しが必須の実戦刀に不向きな皮・心鉄構造以外なら、硬・軟鋼の合わせであれ無垢 であれ、目的を達成する為の手段はいずれであっても構わない。 本刀の作刀年代を勘案すれば、洋鋼を使った可能性が高い。何故なら、大正末にたたら製鉄 の火が消え、「靖国たたら」が復活したのは昭和8年である。ここでの玉鋼は日本刀鍛錬会 で先ず使われて「九段刀」が打たれた。それ以外に玉鋼が供給されたのはそれから暫く後の ことになる。 (刀身提供元:刀剣しのぎ桶川店・新藤智之 店長様)
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元 素 | 働 き |
炭素 (C) | 鋼にとって最も重要な元素。焼入、焼き戻しに依って鋼の粘硬性を変化させる |
マンガン (M) | 焼入を良くし、粘硬性を増す。1.2〜1.5%含有すると高張力鋼になる |
珪素 (Si) | 耐熱性、硬さ、靱性を増す。含有1%に付き、引っ張り強度が約 98Mpa 増す |
燐 (P) | 有害元素。冷間脆性で鋼を脆くする。少ない程良い |
硫黄 (S) | 有害元素。熱間脆性で鋼を脆くする。少ない程良い |
鋼 の 種 類 | 炭素 (C) |
マンガン (Mn) |
珪素 (Si) |
燐 (P) |
硫黄 (S) |
そ の 他 | 備 考 |
炒鋼 (長野・古代直刀55號) ※1 | 0.62 | 0.15 | 0 | 0.014 | 0 | 銅(Cu) 0.018 | 俵国一 |
和鋼 (砂鉄系) 分析・俵国一 ※2 | 1.33 | tr | 0.04 | 0.014 | 0.006 | - | 「鉄と鋼」第67號 |
洋鋼 (水素還元鉄・純鉄) ※3 | 0.006 | 0.01 | 0.008 | 0.01 | 0.007 | 銅(Cu) 0.02 | 小倉陸軍造兵廠 |
スウェーデン鋼 (炭素鋼) ※4 | 1.20 | 0.30 | 0.20 | <0.02 | <0.017 | クローム(Cr)0.17 | 安来白紙1號相当 |
元 素 | 働 き |
クロム(Cr) | 耐摩耗性、耐蝕性(耐錆)向上。浸炭を促進し、焼入れし易くする。ステンレス鋼には13%以上含有 |
ニッケル(Ni) | 耐蝕性(耐錆)、強靭性与え、粘りによる低温時の耐衝撃性を向上。熱処理を容易にする |
銅(Cu) | 耐蝕性(耐錆)向上。錆の進行を抑える。但し、量が多いと割れ易くなる |
モリブデン(Mo) | 焼入に最も優れた元素。結晶粒の粗大化を防ぎ、引張り強度(靱性)を増大さす。耐蝕性に優れる |
バナジウム(V) | 硬度・強度を増大さす。結晶粒を細かくし強靱性を付与。耐摩耗性に優れる |
タングステン(W) | 硬い炭化物を形成、硬度と鋭い切れ味をもたらす |
ホウ素(B) | 0.003%以下の添加で焼きを良好に入れる |
チタン(Ti) | 焼き入れを阻害する元素。但し、鋼に添加されると耐蝕性、強靱性を増す |
コバルト(Co) | 耐熱性を増大させる |
鉛(Pb) | 被削性を向上 |
硬・軟鋼の練り材は、刀身全体が不均質となる。 これを研ぎ出すと、軟鋼部が凹み、刀身表面に凹凸を生じる。 古刀地鉄を粗く感じるのはこの為である。 刃先は鋸(のこぎり)状となり、これが鋭い切味を生む。 刀身の美もこの不均質から生まれた。 新刀以降の均質化した和鋼では、これらの特性が失われた。 |
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